黒坂岳央です。
「未来のために今を我慢する」、筆者はこの言葉に違和感がある。
将来を見据えた行動は美徳とされがだが、それが“今”を犠牲にする理由になってしまうなら、本末転倒である。
本稿では、筆者が大切にしている“今こそ最重要”という価値観について、教育、キャリア、資産形成の視点から掘り下げていく。

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人生で最も価値が高いのは「今」
誰しも「将来が大事だ」と言われて過ごす。社会に出ても「将来のキャリア形成を~」「老後の準備が~」と似たようなことを言われる。驚くことに20代から老後の資産形成を見据えてひたすら貯金や蓄財をする人もいる。
昔の自分は同じような思考、価値観を持っていた時期もあったが、今は全く違う。今をないがしろにしてより良い未来などあり得ない。
すべての人にとっては今日が一番人生で若く、そして「今日」が人生で最も大事なタイミングなのだ。
人生前半が最も大事
育児をするとわかるが、子供の人格形成や育成において最も重要度の高いタイミングは幼児期である。この時期に親が子供に求められるだけ、愛情を全力で注ぐことがその子の一生を左右するといっても過言ではない。
自傷行為や狂った承認欲求など大人になって噴出する問題行動や対人関係の多くは、「幼少期の親からの愛情不足」でかなりの部分を説明できてしまう。そしてここを間違えると後からは取り返しがつかない。
その後も小学校、中学校と子供は成長していくが、前半ほどその後の人生に与える影響度が高いことは言うまでもない。早い段階で成績が伸びる勉強法を理解していれば、その子は学力が高まるが、小学校で躓けば中学、高校、そして大学と躓き続ける(筆者自身がそうだ)。
これは米国の心理学者ベンジャミン・ブルームの研究、「子どもの知能や性格の基礎はおおむね5歳までに決まる」でも説明されている。このような研究からも、人生の早い段階、幼少期の育成がいかに人生に影響を与えるかがわかる。
社会人も「前半」が大事
若いうちにこそ教育・経験・投資など、さまざまなリターンを得やすいフェーズがある。しかし一方で、多くの人は将来の不安から“備える”ことばかりに注力してしまう──ここに、筆者は大きなギャップを感じている。
社会人は若く、独身の時期にできる限りハードワークして仕事術やスキルを身につけることで20代後半、30代以降のキャリアに影響する。
資産形成についても、金融投資は長期右肩上がりという本質があるため、「どれだけ資金を早く投資できるか?」が鍵となる。このように人生における教育や挑戦は早ければ早いほどいいのだ。
とはいえ、もし若い頃に十分な行動ができなかったとしても、落胆する必要はない。
時間は戻らないが、“今”が人生でいちばん若い瞬間であることに変わりはない。今この瞬間から頑張ることでこれからの未来を輝かせることができる。過去を悔やむ暇があれば、今すぐ頑張るべきだ。
備えすぎはムダになる
この本質を考えると、将来をあまりに過大評価し、逆に現在を過小評価することは自分には間違っているように思える。
資産運用をする人の中には、今の生活を質素倹約に過ごし、そこで生み出した資金をひたすら株式に投資し続ける人がいる。こうした行動は資産拡大という目的達成を考えると正しい。しかし、問題は「いつまでやるか?」「今、お金を使わなくても良いのか?」ということだ。
資産運用に熱中すると、シューティングゲームのハイスコアアタックのような感覚になり、ひたすら残高を増やすゲームに熱中してしまう。そのため、増やすのは気持ちよくても、取り崩して減らすのは非常に難しくなる。
筆者の知人に「株はどれだけ暴落しても待てば回復する」といっていた高齢者がいたが、その人はとうとう株を売らずにこの世を去った。これではなんのために忍耐強く株を買い続けたのかわからなくなってくる。彼が資産運用に費やした時間、忍耐、種銭を捻出した労働はタダ働きだったことが死後になってわかるのだ。
資産運用は「増やしたお金で人生を豊かにする」ことであるはず。そう考えるなら、早い段階で使い始めるべきだ。老人になって体力も気力も衰えて使い道のないお金は増え、結果として若い頃にこそ味わえる経験を逃してしまうのでは意味がわからなくなってくる。
◇
将来の準備は大切だ。しかし、それと同じかそれ以上に「今をどう生きるか」を問い直すことが、結果としてよりよい未来に繋がるのではないだろうか。
資産形成、キャリア、子育て──どれも早いうちからの行動が鍵になりますが、それは「未来のための我慢」ではなく、「今この瞬間を豊かにするための選択」であるべきだ。なぜなら、“今”の連続が、唯一の「未来」だから。
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