インフレ円安時代、やってはいけない悪手

黒坂岳央です。

日本でインフレ円安が続いている。インフレはCPIが前年比で鈍化するなど、ピークアウトしたような印象を受けるかもしれない。だが今後も海外でインフレが落ち着かない限り、円安の影響で輸入価格は確実に上がるだろう。

インフレと円安で個人レベルでの対策を聞くことがあるが、「それは効果がないのでは?」と感じるような悪手と思えるものが耳に入ることがある。

takasuu/iStock

1. 安売りでしのぐ

保護者会などで「最近、スーパーやディスカウントショップの値上がりがしんどい」という話題になった時に、「できるだけ安い店を探して節約」「セールで買いだめ」「家庭菜園を始めた」という保護者がおり、安い店やセール時期の情報共有で盛り上がっていた。だが果たしてこうした戦略は効果があるのだろうか?

個人的に、このような取り組みは有効な対策としてワークすることはないと考える。理由はシンプルであくまで長期トレンドは円安、インフレ基調は継続する公算が大きいためだ。国は物価上昇要因を容認する姿勢を続けており、新NISAも何かあると税の徴収を考え、円安要因の1つになるにも関わらず、政府が積極推進をするのもそのように考える根拠の1つだ。

米国経済がハードランディングして、キャリー・トレードの巻き戻しや大規模なレパトリエーションが起きて、米国の利下げと円高要因が同時にくるような自体にならない限り、そう簡単には今の状況は変わらないことが予想される。

そんな大局トレンドに小手先の節約は焼け石に水である。今、真剣に考えるべきはスキルアップで、より高収入の仕事へ転職をして付加価値をつけて手取り収入を増やしたり、資産運用でインフレと円安に勝つスキルを付けることだろう。仮に現況がそのきっかけになるなら、トータルで見れば災い転じて福となすとなる可能性はある。

「国の政策が悪い。今はタイミングが悪い」という意見も出そうだが、マクロ環境を理由にいつまでも行動しなければ結局、損をするのは自分自身である。やる人はどんな環境下でもやる。筆者は就職氷河期、リーマンショックで当時、就職で大変な思いを経験したが、「鉄火場では誰も助けてくれない。行動することで閉塞的な状況を打破できるのは自分だけだ」という感覚を得た。多くの人にとって今がまさにその時ではないだろうか。

2. 過剰な節約意識

時々見られるのが「とにかく爪の先に火を灯す勢いで何でも節約」という意見だ。気持ちはわからなくもないし、無駄を省いて適度な節約は確かに効果がある。しかし、それが行き過ぎると逆効果になると思うのだ。

お金がないということで真っ先に削られるのは、食品の質や教育である。食品はパッと見の外観からはわかりにくく、きれいにパッケージされていたら忘れがちだが、「安かろう悪かろう」という経済のメカニズムから逃れることはできない。

たとえばスーパーにおいてある豆腐は、安いものだと20円、30円で売られている一方、値段がするものは100円を超える価格だ。パッと見で同じ豆腐に見えるのだが、ものによっては注意が必要だ。安い豆腐は遺伝子組換え大豆、消泡剤や凝固剤など健康を害する危険因子になり得ると主張する専門家もいる。また、食事がビタミンやタンパク質の代わりに、安い炭水化物やトランス脂肪酸、糖質食品ばかりになると栄養バランスが乱れてしまう。健康はすべての資本なので、削ってはいけない。

そしてさらに見落とされがちは教育ではないだろうか。「スキルアップをしたいけど、お金がもったいないからテキストを買わない」といった行動は将来の芽を摘む行為になる。勉強をしなければ、スキルという付加価値をなくしてしまい、結果としてインフレ負けしてしまう。

現在、活躍するビジネスマンは順風満帆ばかりではなかったはずだ。中には金融危機や経済不況の逆境の中で自己研鑽に励んだことで力をつけてきた人も存在する。手前味噌ながら自分自身もそうだった。お金がないからこそ、教育費を削ってはいけないのである。

インフレや円安といった状況に、多くの日本人は慣れていない。数十年以来の出来事にどうすればいいかわからず、場当たり的な対策で乗り切ることを考える人もいるだろう。だが、大きな流れに逆らい続けるやり方は通じない。時代は変わったと認識し、新時代の生存戦略を受け入れる。それが変化に対応するということなのだ。

 

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