2024.04.29

突然の大地震、待ち受ける「恐ろしいシナリオ」…もし、大切な人がなかなか逃げようとしなかったら

地震や津波、水害等で避難情報が出ても、ほとんど避難しないということが多いのはなぜか。いわゆる正常性バイアスがまず影響している。ちょっとした変化なら「日常のこと」として処理してしまう人間心理のことである。

また体が不自由なことの多い高齢者などの場合では、避難生活の不自由さや環境変化への「不安」が「なるべく避難をしたくない」という行動抑制につながっている部分もある。「不安」を軽減しながら、安全に避難をするためにできることとは。防災・危機管理アドバイザーの古本尚樹さんが解説する。

記事前編は「突然の大地震、『ほんの少しの油断』が生死を分けるかもしれない…日本人が意外と知らない事実」からお読みいただけます。

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災害関連死への懸念

最近の事例では、災害関連死のことも影響しているだろう。直接の災害では生き延びても、その後の避難生活中の環境変化や、医療、保健等アクセスの不具合による関連死の問題は、必ずしも避難先やその生活が「安全ではない」ことを印象付けている

実際、熊本地震では死者の約8割は関連死になっている。関連死の背景となる要因として挙げられているのが、東日本大震災では「避難所などにおける生活の肉体的・精神的疲労」や「避難所などへの移動中の肉体的・精神的疲労」が指摘されていて、なるべく移動しないほうが安全では、という意識において、拍車をかけている可能性がある。また、熊本地震では「地震のショック、余震への恐怖による肉体的・精神的負担」が最も多く、次いで「避難生活の肉体的・精神的負担」が大きかった。だれも知らない、新しい環境での苦労をするのを避けたい、なるべく避難したくないという気持ちが影響していると思われる。

こうした意識になりやすいのは、過去に避難行動をしたことがなかったり、避難所での生活を経験していなかったりする階層が多い。経験したことのない未知なる不安が少なくない。ではこのような不安を軽減しながら、安全に避難をするためにはどのような対策が可能なのだろうか。

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