【ドル円】円安が加速する中、何が起きた場合、円高に振れるのか？

質問

円安の話がずいぶん盛り上がってきて、歴史を見ればそこまで今は円安ではないというような趣旨の話もちらほら見かけるようになりました。為替は全然分からないので恐縮なのですが、いまは放っておけばどんどん円安になる状態だとして、逆に何が起きた場合円高に振れるのでしょうか。

回答

財務省と日銀の手詰まりを見越しているから、みんなが安心して円安に賭けているわけです。ですから、円高誘導はなかなか難しいです。

①大規模な利上げ。現在の円安の大きな原因は、日本が行った「異次元の金融緩和」、特にマイナス金利政策の帰結です。米国などと金融政策が大きく違い、金利差が大きくなったからです。ですから、いきなり1-2%ぐらい利上げしてみれば、円安には効果的です。しかしこれは自国経済を殺しますから、抜けない刀でしょう😅。実際、先日の金融政策決定会合では、円安にも関わらず、短期金利の誘導目標が据え置かれて実質的にゼロ金利が継続されました。これで「日銀は金利で手を打てない」と読まれて、さらに円安が進んだ経緯があります。

②外為特会(外国為替資金特別会計)をなんらかの方法で大幅に増額する。これは大規模な為替介入をするサインになります。でも思い付いてはみたけれど、日本の外貨準備高の多くはもう外為特会になっていますね😅。国が短期的な借り入れをするしかしかないでしょうが、こんなことをやったらどうなるんでしょうか。

③大規模な為替介入を1回やってみる。為替の円買い介入は外貨準備高を使うので、なかなかやりにくいでしょうが、確か外為特会が現在140兆円ぐらいあるはずなので、2-3兆円ではなく、30兆円とか50兆円という規模で為替介入をやってみる。これはまさかまさかのことなので、為替投機勢は慌てると思います。

ただポンド危機における英国財務省の大規模介入とジョージ・ソロスの戦いは、英国の外貨準備高が尽きた結果、ソロスの勝利に終わっているんですよね😅。

④国際的な協調介入。日本が一国でできることは限られているので、米国などの国際的な円高への大規模な協調介入を取り付ける。これは為替投機勢にはサプライズになると思いますが、海外の通貨当局がこれに応じてくれるかどうかは疑問が残りますね😅。3年目の神田財務官をはじめとする日本の通貨マフィアの腕の見せどころなんですが、海外の通貨マフィアをどれだけ説得できるでしょうか？

⑤日本の景気がめちゃくちゃ良くなる。これが一番真っ当です。購買力平価で見て円高方向に振れるので、誰も円安には賭けにくくなります。でも果たしてこんな事態が起こるのかどうか😅。

⑥日本企業の国際競争力がめちゃくちゃ強くなる。貿易黒字がどんどん増えて外貨準備高を増やせばいいんですが、なんか回答していて虚しくなってきました😅。

どれも弊害が大き過ぎたり、非現実的だったりします。なので現在、絶賛円安中なわけです。円安の最大の弊害は輸入物価高による「コストプッシュインフレ」ですから、何も手が打てない以上、植田さんは先日の金融政策決定会合の後の記者会見で、円安が物価に与える影響について問われ、「今のところ大きな影響は出ていない」と答えるしかなかったんです。

「歴史的に見ればそこまで円安ではない」というのは、1985年の「プラザ合意前」を言っているんだと思います。合意前は確か1ドルが235円ぐらいでしたから。合意して1年後が150円ぐらいになったので、80円以上一気に円高に振れたわけです。

あの合意は日本の貿易黒字減らしが主な目的でしたから、現在の34年ぶりという円安水準は、日本企業がどんどん稼いで貿易黒字を貯め込んだ時代の終わりを象徴するものです。

果たして「プラザ合意前」の円安水準に戻って行くのでしょうか。そうなれば、日本人が海外旅行になかなか行けない時代にまたなりますね。