これほどまでに「彼を驚嘆させる」とは…! 深さ6kmなんて知らないナウマンが見抜いた「フォッサマグナの特異さ」

日本列島の成立や、今後の変化や姿を考えるのに非常に重要な地質構造であると言われる「フォッサマグナ」。しかし、謎もまた多く、そもそもその範囲さえ確定していません。

南北で大きな地質学的な違いがあるフォッサマグナは、日本を取り巻く海洋の地形や成り立ちとの関係で見てくると、より一層その特異な姿が浮かび上がってきます。これまで、このフォッサマグナシリーズの記事では、地形・地質の特異さ、成立の背景、南北での違いなどを、ミステリーのごとく“推理”してきました。

そこで、今回から、日本、あるいは世界のどこかに、フォッサマグナに酷似した特徴的な地形を探し、フォッサマグナの特異さを検証してみることにします。まずは、探索のための“証拠”として、フォッサマグナの特徴を洗い出していきます

*本記事は、『フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体』の内容から、再編集・再構成してお送りします。

**記事中、本シリーズの別の記事を参考にご紹介しています。ご覧になっているサイトにより、ご紹介記事名のリンクが無効の場合は、記事下方の【関連記事】よりお進みください。

フォッサマグナの特異さとは何か

これまでの記事では、南北フォッサマグナの地層からそれぞれの地形の発達史や、そのような地形がどのようにしてできたのかを、日本海やフィリピン海とのかかわりを通して見てきました。

北部フォッサマグナをつくった日本海の拡大については謎は残るものの、これで大まかには、フォッサマグナの成因について語られたといえなくもありません。実際、フォッサマグナの解説書でも、ここまでで説明を終えているものが多いようです。

しかし私には、日本海の拡大と伊豆・小笠原弧の衝突だけでは、フォッサマグナができるための必要条件にはなっていても、十分条件までは満たしていないように思われてなりません。

つまり、このような条件があればフォッサマグナができるかもしれないけれど、かと言って、これだけでフォッサマグナができるとも思えないのです。

ナウマンはフォッサマグナを発見した当時、この地形は世界でここにしかない稀有な構造と言っています。私の知るかぎりでも、このような名前(「大きな溝」の意)を冠した地質構造はほかにはありません。フォッサマグナは世界でも特異な地形なのです。

フォッサマグナがなぜ特異な地形なのか、もう少し考えてみると、ナウマンが最初に感じたのはもちろんフォッサマグナの「深さ」ではなかったはずです。地下6000m以上もの地溝が埋まっているとは、いかな天才地質学者でも気づきようがありません。

では、ナウマンは何をもって世界に稀有な構造と直観したのでしょうか。

ナウマンが驚嘆した「落差」

それは、ナウマンがフォッサマグナを発見した経緯についての記事*でも述べたように、平坦な台地の向こうに、いきなり2000m以上の山々が壁のように屹立している、その「落差」の大きさにだったのでしょう。落差こそがフォッサマグナを世界に無二の地形にしているのです。

【写真】ナウマンがフォッサマグナを見出した長野県南牧村平沢峠付近獅子岩からの眺望ナウマンがフォッサマグナを見出した長野県南牧村平沢峠付近獅子岩からの眺望。中央の山塊が八ヶ岳 photo by gettyimages

ナウマン先生が思わず立ち尽くした絶景…!なんと、日本列島の過去から未来までを解明するカギだったという「衝撃の事実」参照

では、そのような落差はなぜもたらされたのでしょうか。それは、北部フォッサマグナにあたる場所が日本海の拡大によって深海に陥没したとき、地質学的な時間でいえばほぼ同時に、伊豆・小笠原弧がたまたまそこに衝突し、陥没を埋めたばかりか、さらに激しく大地を隆起させて南部フォッサマグナをつくったからではないかと思われるのです。

つまり、陥没と隆起が絶妙なタイミングで起こることが、フォッサマグナ形成の必要条件だったのではないかと。もしそうだとすれば、そのような巡りあわせを生んだものはいったい何だったのでしょうか。

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