2023年の春節で行われた「厳しいネット情報規制」と「中国政府が本当に隠したかったもの」

中国では22日に春節を迎え、うさぎ年が始まった。なんでも、同じく旧暦正月を祝うベトナムでは今年はネコ年だそうで、日本の亥年が中国ではブタ年みたいなものらしい。お国変われば、干支も変わるようだ。

それにしても、中国ではせっかく海外との往来やPCR検査なしの国内往来が3年ぶりに解禁されたというのに、現地からはあまりその喜びが伝わってこない。

「お祝いムード」のない静かな春節

覚えておられるだろうか? コロナの感染は2020年の春節直前に始まった。「もういくつ寝ると〜」の秒読み段階に入った時点で突然、中国政府が湖北省武漢市で新型コロナウイルスの感染拡大を正式に発表すると同時に都市封鎖が始まった。

だが、その時点では里帰りや旅行を予定していた人たちのほとんどが行動を起こしたところだったため、各地に散らばった人たちを追いかけて湖北省全体に封鎖が拡大された。おかげで移動中だった人たちやあるいは旅先にいた人たち、さらには逆に湖北省でお正月を迎えようと外から帰ってきていた人たちが足止めをくらうはめになった。

2020年都市封鎖後の武漢のスケートリンク GettyImages
 

それでも突然の都市封鎖に驚いたものの、直接影響を受けない地域の人たちは予定通りに春節を過ごしていた様子は、SNSやネットからも伝わってきた。翌21年は行動制限下だったが、抑え気味ながらも「1年に1度の春節だし」というお祝い気分があった。昨年22年は「そろそろ今年は行動制限も解除されるだろう」という淡い期待感とともにまだ前向きなお祝いムードは感じられた。

だが、さまざまな規制から開放された今年の春節は、SNSを見てもしらーっとしたムードが漂う。お祝いの言葉は交わされているものの、これまでのようなまるで競争のように絵文字やGIFを使ってタイムラインがお祝いの赤い色一色になることもなかった。いつもなら誰かがスマホペイメントを利用したお年玉袋をタイムラインに投げ込み、みんなでゲーム感覚で分け合うお年玉合戦も今年はまったく目にしなかった。

つまり、大盤振る舞いや、お祭りムードを盛上げようという意欲がまったく見られず、人々は自分が暮らす場でそれぞれに、また堅実に、周囲の人たちと過ごす様子をアップしてそこにいる友人たちにお祝いの言葉をかけるだけ、それが主流になっていた。ある意味質素で、ある意味昔ながらのお正月のムードだった。そしてそこに上がった近況写真で初めて、「ああ、この人も『潤』したんだ…」と気付かされるケースも少なからずあった。

「潤」とは昨春の上海ロックダウンの頃から広く人々の口に上るようになった言葉で、英語の「run」(逃げる)と中国語の「潤」の発音表示「run」(発音は「るん」)をかけた流行語だ。「潤」には文字通り「潤う」の意味があり、「run」することで「潤う」(豊かになれる)といったイメージも重なり、政府の厳しいコロナ措置に疲れた中国人の移民、留学、海外脱出ブームを形容して使われている。

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