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労働時間や日数が変わらないのに、社会保険の扶養から外れる3つの要因

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労働時間や日数が変わらないのに、社会保険の扶養から外れる3つの要因

健康保険の被保険者になっている会社員などの、一定範囲の親族(後期高齢者医療の対象になる75歳以上は除く)のうち、原則として日本国内に住んでいる方は、所定の要件を満たせば健康保険の被扶養者になれます。

この健康保険の被扶養者になった方は、各人が保険料を納付しなくても、2~3割の自己負担で診療を受けられます。

また健康保険の被扶養者になれる一定範囲の親族は、次のような2種類に分類できるのです。

(1)被保険者と別世帯でも被扶養者になれる親族

・配偶者(内縁関係も含む)

・子供(養子も含む)

・孫

・直系尊属(父母、祖父母など)

・兄姉弟妹

(2)被保険者と同一世帯であれば被扶養者になれる親族

・(1)以外の3親等内の親族

・内縁関係にある配偶者の父母と連れ子

・内縁関係にある配偶者が亡くなった後の、その父母と連れ子

いずれの親族であっても、年収130万円(60歳以上の方、または障害厚生年金の受給要件に該当する方は180万円)未満という要件を、満たす必要があります。

これに加えて健康保険の被保険者と、被扶養者になろうとする親族が同一世帯の場合には、被扶養者になろうとする親族の年収が、被保険者の年収の2分の1未満であることが求められます。

一方で健康保険の被保険者と、被扶養者になろうとする親族が別世帯の場合には、被扶養者になろうとする親族の年収が、被保険者からの送金額よりも少ないことが求められます。

社会保険の扶養から外れる 3つの要因

国民年金の保険料を納付する必要がない第3号被保険者

健康保険の被扶養者の要件を満たしている、20歳以上60歳未満の配偶者(内縁関係も含む)は、所定の届出によって、国民年金の第3号被保険者になれます。

この第3号被保険者になれば、国民年金の保険料(2022年度は月額1万6,590円)を納付する必要はありません

そのうえ納付したものとして取り扱われるため、健康保険の被扶養者と同じように、お得な制度だと思います。

また健康保険の被扶養者になったり、国民年金の第3号被保険者になったりすることを、「社会保険の扶養に入る」と表現する方がおります。

パートやアルバイトなどで働く方は、労働時間や日数が増えることによって、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入要件を満たしたり、年収が130万円(180万円)以上になったりする場合があります。

そうなると社会保険の扶養から外れてしまうため、自分で保険料を納付する必要があるのです。

ただ労働時間や日数が変わらなくても、次のような3つの要因によって、社会保険の扶養から外れるケースがあるのです。

要因1:最低賃金の引き上げ

国は最低賃金法に基づいて賃金の最低限度、いわゆる最低賃金を定めるため、雇用主は原則として従業員に対し、その最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。

この最低賃金は2種類あり、そのひとつは都道府県ごとに1つずつ定められている、地域別最低賃金になります。

もうひとつは特定の産業に従事している労働者を対象にした、特定(産業別)最低賃金になります。

2022年度も例年のように10月1日から、全国の都道府県において順次に、最低賃金が見直しされる予定です。

ここ最近の物価上昇などの影響により、地域別最低賃金の全国加重平均額は、前年度比で+31円の961円(時給)になったため、過去最大の引き上げ幅でした。

このような最低賃金の引き上げにより、労働時間や日数が変わらなくても、社会保険の扶養から外れる場合があるため、ぎりぎりで年収130万円(180万円)未満という要件を満たす方は、特に注意する必要があるのです。

要因2:社会保険の加入要件の改正

パートやアルバイトなどで働く方は、次のような5つの要件をすべて満たした時に、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入します。

(1)賃金の月額(賞与、通勤手当、残業手当などは除く)が、8万8,000円以上である

(2)1週間の所定労働時間(あらかじめ働くことが決まっている契約上の労働時間になるため、残業時間などは含まない)が、20時間以上である

(3)学生ではない(通信、夜間、定時制の学生や、休学中の学生は加入対象)

(4)1年以上に渡って雇用される見込みがある

(5)従業員数が501人以上の会社(社会保険への加入に対して労使の合意がなされている、従業員数が500人以下の会社も含める)で働いている

こういった社会保険の加入要件の(4)と(5)が、2022年10月1日から次のように改正されます。

(4)2か月超に渡って雇用される見込みがある

(5)従業員数が101人以上の会社で働いている

また2年後の2024年10月1日からは、(5)が次のように改正される予定です。

(5)従業員数が51人以上の会社で働いている

これらの改正に当てはまる方は、労働時間や日数が変わらなくても、勤務先の社会保険に加入するため、社会保険の扶養から外れてしまうのです。

また最低賃金の引き上げにより、(1)の「賃金の月額が8万8,000円以上である」という要件を満たして、社会保険の扶養から外れる場合もあると思います。

要因3:正社員の労働時間や日数の短縮

上記のような5つの要件を満たした場合、パートやアルバイトなどで働く方は、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入しなければなりません。

これに加えて「1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所において、同じ業務に従事する正社員の4分の3以上」という要件を満たした時にも、社会保険に加入しなければなりません。

後者の4分の3基準は、正社員の労働時間や日数を基準にして、社会保険に加入するか否かを判断するのです。

そのため正社員の労働時間や日数が短縮されると、パートやアルバイトとして働く方の労働時間や日数が変わらなくても、勤務先の社会保険に加入し、社会保険の扶養から外れる場合があるのです。

ここ最近は週休3日制などの、正社員の労働時間や日数を短縮させる制度が、注目を集めております。

実際に勤務先で導入された場合には、同じ業務に従事するパートやアルバイトなどの社会保険の加入に、影響を与えるかもしれません。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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