2022.09.26
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英単語と文法を猛勉強しても英語が話せないのには「理由」があった!

英語は単語で覚えてはいけない?

なぜ一生懸命勉強しても英語が身につかないのか? なぜいま「定型表現(決まり文句)」が注目されているのか? 話題の新刊『英語は決まり文句が8割 今日から役立つ「定型表現」学習法』をよみとく。

書き言葉・話し言葉の多くが定型表現だった

「Just a moment, please」──私が書店員として働いていた時、もっとも口にした英語の定型文だろう。「お客様から問い合わせを受けたら、何も言わずにその場を離れてはいけない。必ず『少々お待ちください』と言ってから動くこと」──先輩からそう教わったものの、英語での接客となると慌(あわ)ててしまい、とっさのひと言が出てこない。だから入社してしばらくは、事あるごとに唱えていた。英語が苦手な私にとって、お守りのような言葉だった。

タイトルの通り、本書の主眼は定型表現(formulaic sequences)の学習法にある。定型表現とは、「2語以上のまとまりで特定の意味を持つ」フレーズを指す。恣意的な制約を持ち、規則で説明できない現象が多く見られる定型表現は、文法や単語といった規則性を持つジャンルに押され、教育の場でも言語学研究の場でも長らく軽視されてきたという。だが近年になり、新たな事実がわかってきた。

技術が進歩し、大量のテキストをコンピュータで分析できるようになると、書き言葉・話し言葉の多くが、実は定型表現で構成されていることが明らかになってきました。母語話者の書いたり話したりした言葉のうち、5~8割程度が定型表現で構成されているという推計もあります。

たとえば「スマホの予測変換」は、時に私たちの予想以上に適切な表現を提案してくることがある。それもまた、「産出された語句の後にどのような語が続くか」がわかる、定型表現の特性を踏まえたものだという。

 

著者は現在、立教大学異文化コミュニケーション学部・異文化コミュニケーション研究科の准教授であり、同大学の英語教育研究所所長も務めている。言語学の中でも、特に第二言語(外国語)における語彙習得に関する研究を続け、その成果を論文や書籍の形で発表してきた。それでも、過去の著作では叶わなかった「定型表現の重要性やその学習法を、もっと詳しく、わかりやすく解説したい」という著者の思いが、本書では余すことなくつづられている。

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