「こっくりさん」が大流行…! 少年たちの世界観を変えた『うしろの百太郎』

「マンガ名作館」'70年代編③

オカルトブームの先駆け

オイルショックが起こり、高度経済成長が終わった1973年。

 

未来に明るい希望を持てなくなったせいか、日本に空前の「オカルトブーム」が巻き起こった。

「1999年に人類は滅亡する」という『ノストラダムスの大予言』(五島勉)がベストセラーとなり、翌'74年には「スプーン曲げ」のユリ・ゲラーが来日し、ホラー映画『エクソシスト』が大ヒット。とりわけ子どもたちの間で決定的だったのが、つのだじろうの『恐怖新聞』、そして『うしろの百太郎』だろう。

つのだじろうはまず「週刊少年チャンピオン」'73年37号から『恐怖新聞』を始め、同じ年の「週刊少年マガジン」50号から『うしろの百太郎』も始めている。

当時のオカルトブームに乗ったというよりも、子どもたちにとっては「つのだマンガ」によってオカルトブームが起きたといっても過言ではない。1回読むと寿命が100日縮む『恐怖新聞』も忘れがたいが、より影響力が強かったのは『うしろの百太郎』だった。

「心霊科学」という言葉の斬新さ

主人公の後一太郎(うしろ・いちたろう)は「後心霊科学超能力開発研究所」を主宰する心霊研究家を父に持つ中学生。次々と霊にまつわる事件に出会う中、「主護霊」の百太郎に守られながら心霊世界への理解を深めていく。

これ以前から、少女マンガを中心に幽霊や化け物が登場するホラーマンガはあった。本作が斬新だったのは、「心霊科学」という耳慣れない言葉を持ち出し、科学と相容れないと思われていた心霊現象や超能力を科学的に説明しようとしたことだ。このアプローチが、科学好きな'70年代の少年たちに大受けした。

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どんな人にも先祖の「主護霊」がついている。死んだ場所から動けなくなった「地縛霊」。「幽界」に行けずにこの世をさまよう「浮遊霊」。肉体と「幽体」を結ぶ「魂の緒」が切れると死ぬ、などなど――。

素直で頭の悪い小学生だった筆者など、これらの話を丸ごと信じた。肉眼には見えないが、たとえば「太陽系には火星や土星という惑星がある」のと同じように、“科学的な事実”として自分にも主護霊がいるのだと疑わなかった。

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