自動車交通のDXに進む米国

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自動車交通DXの二本柱は、電気自動車(EV)と自動走行である。

EVの充電施設について、米国運輸省が6月22日に新しい規制案を公表し、パブリックコメントが始まった。

インフラ投資雇用法の下で、バイデン政権はNational Electric Vehicle Infrastructure (NEVI) Formula Programを進めている。NEVIは、全米のEV充電施設のネットワークを拡充するための州政府への助成制度であって、総額は5年間で50億ドルである。

JETROのビジネス短信によると、2030年までに50万基の充電器を設置することが目標だそうだ。2022年2月14日時点で充電施設数が4万6,884カ所で、充電ポート数が11万5,265口なので、5倍から10倍の拡充を狙っている。

しかし、EV充電施設の設置・運用・保守に関する国内基準はなく、施設の構造も、運用慣行、支払い方法も、設置されている充電器の充電速度などもバラバラである。そこで、すべての人に使いやすい構造になるように、また、共通の支払い方法が利用できるようにしようと、米国運輸省は規制案を作成した。

規制案には六つの項目がある。

  1. 管理資格を持った技術者による運用
  2. EVと充電施設間の相互運用の確保
  3. 交通管制との連携
  4. 四半期及び年次での運用実績報告
  5. 送電ネットワーク(スマートグリッド)との連携
  6. アクセシビリティ

スマートグリッドと連携すれば、全体の電力需要をもとに充電速度を調整して大停電を回避するといった対応が可能になる。交通管制と連携するのも交通量の制御に役立つ。EVは孤立して動くものではなく、ネットを通じて他のシステムと連携するものだという、DXが規制案の基にある。

充電施設にアクセシビリティを求めている点も興味深い。2021年春に3つの記事「誰もが利用できる自動走行車を目指して」「障害者が利用する自動走行車の設計指針」「フルスペックの自動走行車の時代を展望して」を連載したが、障害を持つ人が差別されない自動走行の在り方について連邦政府内で議論が進んでいる。

充電施設のネットワークが構築され、自動走行車が走り出してから、障害者が利用できないと気づいてバリアフリー化を図るのでは手戻りの費用が掛かる。できる限り初期から、多様な人々が利用する自動車交通DXを設計しようというのが、ユニバーサルデザインの思想である。

情報通信政策フォーラム(ICPF)では、自動車交通のDXについて7月14日にセミナーを開催する。ぜひ、参加していただきたい。