2022.06.29

高倉健と角川春樹が邂逅した名作『野性の証明』の裏話を語りつくす!

かくしてスター映画は復権した

映画『野性の証明』は、高倉健が出演した最初で最後の角川映画であり、薬師丸ひろ子のデビュー作。かつてない壮大なスケールで描かれた父娘の物語は、多くの人々を惹きつけた。

大ヒットを果たしたこの作品について、本作に出演した中野良子氏、プロデューサーの遠藤雅也氏、評論家の中川右介氏が裏話を語りつくす。

製作費も常識外れ

女優の中野良子氏[Photo by gettyimages]

中川 『野性の証明』の公開は'78年。当時高校3年生だった僕も、公開直後に映画館に足を運びました。

その2年前の『犬神家の一族』からスタートした角川映画は、翌年の『人間の証明』と回を重ねるごとにスケールが大きくなり、観客動員も増えました。学校でもほとんどの同級生が観ていたのではないでしょうか。

遠藤 私はプロデューサーとして主に国内での撮影を仕切りました。当時の日本映画は3億円程度の製作費が標準でしたが、本作は12億円と破格の費用をかけた超大作です。

配給収入も21億円を超え、この年の邦画では1位になり、興行的にも大成功をおさめました。

中野 私は地方都市で絶対的な権力を持つドンの不正を暴こうとする新聞記者かつ、主人公の高倉健さんに淡い恋心を抱くヒロイン役を演じました。

改めて作品を見直すと、反省点も目に付きました。でも、多くのお客様が喜んでくれたことは懐かしい思い出です。

 

中川 『野性の証明』は監督・佐藤純彌、原作・森村誠一のタッグに加え、大規模な海外ロケと『人間の証明』の成功パターンを踏襲していますが、これまでの角川映画にはない点があります。

それは高倉健という当代随一のスターを主役に起用したことです。製作を指揮した角川春樹さんは、スター映画の復権を目指していました。

遠藤 たしかに健さんのほかにも、出演者の豪華さでは角川映画でも屈指と言えます。丹波哲郎、三國連太郎、松方弘樹、梅宮辰夫と主役級の役者ばかり。

どの場面を見てもスターがいると言っても過言ではない。しかも、顔見せ興行的な安易な作りにはなっていません。

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