中国から日本人のデータを守るために進められていること

LINEの安全性は向上したのか
インターポール(国際刑事警察機関=ICPO)でナンバー2として、サイバー犯罪対策を行うサイバーセキュリティ総局で初代局長を務めた中谷昇氏。2019年に警察庁を退官し、現在はZホールディングスの常務執行役員「Group Chief Trust & Safety Officer」を務めている。そんな中谷氏が、今回、『超入門 デジタルセキュリティ』(講談社+α新書)を上梓した。そこで、インターポール元幹部から見たデジタルセキュリティの現状について、サイバー安全保障やインテリジェンスなどに詳しい国際情勢アナリストの山田敏弘氏が話を聞いた。

着々と進む経済安保への整備

山田:政府は最近になって経済安全保障への対策強化を始めています。経済安全保障相という新しいポストができ、2019年に発足した国家安全保障局(NSS)の経済班はその大臣の下で活動することになった。また経済安全保障室も設置され、法整備も行なっていくと見られています。

日本も経済安全保障について、近年やっと重い腰を上げたように感じます。

中谷:はい、デジタルセキュリティは経済安全保障のど真ん中になっています。その観点から、昨年後半に大きな動きが出ています。

2021年9月、政府が次期サイバーセキュリティ戦略の方針を決定。初めて、中国、ロシア、北朝鮮をサイバー攻撃の脅威対象国として名指しました。

また、警察庁は2022年にサイバー局を新設し、関東管区警察局にサイバー直轄隊を設置すると発表。これは、警察庁に直接事件捜査する権限がなく、都道府県警察が実際の犯罪捜査を行うことになっている現行の警察制度に対する大きな変更です。

警察庁サイバー局が新設された後には、サイバー犯罪捜査の司令塔として、全国の警察からサイバー犯罪捜査官を集めてサイバー犯罪対策を国主導で行なっていくことが期待されています。

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