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第104回世銀・IMF合同開発委員会 コミュニケ(ポイント)(2021年10月15日 於:ワシントンD.C.)

  1. 開発委員会は、本日2021年10月15日に開催された。

  2. 世界経済の回復は不均等であり、パンデミックの見通しも不透明である。低所得国(LICs)や中所得国(MICs)では、引き続き新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の多数の感染者、変異株のリスク、ワクチン供給のボトルネック、ワクチン接種への障害が見られる。これらの国々の経済は、パンデミック以前のGDPを下回る水準にとどまり、更に下落している。変動の大きいコモディティ価格、サプライチェーンの途絶、インフレ圧力、財政余力の制約により、政策の選択肢は更に複雑になっている。

  3. 我々は、過去最大の危機対応を行った世界銀行グループ(WBG)を称賛する。WBGは、2021年度末までに、100以上の国において保健危機への緊急対応の支援や保健システムの強化をするとともに、貧困層や脆弱層の保護、社会保障の拡大、ビジネス支援、雇用の保持や創出のために、合計1,570億ドルもの支援にコミットした。パンデミックは、持続可能な形での、極度の貧困の撲滅と繁栄の共有の達成という二大目標や、持続可能な開発目標(SDGs)の進捗を後退させた。推定1億人以上の人々が極度の貧困に陥り、うち80パーセントはMICsの人々である。数百万もの雇用が失われる一方で、非正規雇用、不完全雇用や食糧不安は増大している。子供たち、特に女子は、学校教育を受ける機会を失っており、教育格差は拡大し、長期的な人的資本リスクが生じている。女性の経済的・社会的状況の悪化は、復興を通じたジェンダー平等促進の重要性を強調する。また、パンデミックはLICs、MICs、脆弱性・紛争・暴力(FCV)下における脆弱性を高めている。

  4. ワクチンは人命の保全と、経済の再開のために、極めて重要である。我々は、WBGがこれまでに55か国で、COVAXやアフリカワクチン入手トラスト (AVAT)を通じて、あるいは製造者から直接、ワクチンを購入・配布するためのファイナンスを実施したことを称賛する。しかし、迅速で公正なワクチンへのアクセスの確保には、未だ課題が残る。我々は、WBG、国際通貨基金(IMF)、世界保健機関(WHO)そして世界貿易機関(WTO)によるタスクフォースに対し、国際的なパートナーシップを梃子にして、製造の拡大、COVID-19ワクチンの展開と配布の促進を目的とした迅速な資金提供、そして、重要な検査・診断・治療のための資金提供を実施することを奨励する。また、我々は、ボトルネックに対処するための各国の準備や行動に関する推進や報告にかかる、タスクフォースの取組みを支持する。途上国において、ワクチン製造の拡大や医療機材の製造業者支援を行う、グローバル・ヘルス・プラットフォーム(GHP)を含む国際金融公社(IFC)の重要性を認識する。また、我々は、多数国間投資保証機関(MIGA)による民間セクター投資の増大を称賛する。我々は、WBGが、途上国における民間資金動員を可能にする、革新的な解決策を引き続き模索することを求める。

  5. パンデミックは、危機の予防、備え、対応への投資の重要性を明らかにしている。全ての国々は、パンデミック、自然災害、気候変動に関連するものを含む、リスクに直面している。国々は、強靱性強化のため、より強固な政策、メカニズム、制度、資金を必要としている。WBGは、開発パートナーと協働しつつ、カウンターシクリカルな政策をよりよく実施する財政枠組みの強化、人的資本の育成、質が高く十分な量のインフラ開発、電力アクセスの向上、強固な保健・社会保障システムの確立、デジタルインフラ開発を含む、国家の強靱性強化に不可欠な主要分野を支援できる特異な立場にある。我々は、WBGが、小国やFCVを含む、最も脆弱な人々に対し、柔軟で迅速に資金を提供することを求める。WBGは、食糧不足や栄養失調、サイバーセキュリティ上の脅威、そしてサプライチェーンの途絶に対するデューディリジェンスの強化といったリスクへの対処やモニタリングにあたり、知見や教訓を活用することができる。我々は、WBGに対し、危機の予防、備え、対応に引き続き取組むとともに、国際的な保健アーキテクチャにおいて役割を果たすことを求める。

  6. WBGは、持続可能な開発のための長期的な目標に沿って、グリーンで強靱で包摂的な復興への支援を継続すべきである。気候変動、生物多様性の喪失、環境悪化は、小国やLICs、MICsが深刻な脆弱性を示している中で、貧困削減、不平等、人的資本、移民、ジェンダー平等、FCV、食糧安全保障に対するパンデミックの影響を悪化させる。資金が不足する中で、WBGは、他の国際金融機関(IFIs)と共に、必要不可欠な改革を進めるために必要な助言をし、公平な国内資金動員や質の高い公的支出、違法な資金の流れの撲滅、民間・公的投資のための環境整備、制度強化に向けた取組みを行うべきである。我々は、グリーンで強靱で包摂的な開発という、広範なアジェンダの一環として、WBGによる雇用創出や経済変革に向けた支援は重要であると断言する。我々は、WBGによる、民間資金動員を含む、気候変動ファイナンスの拡大のための更なるメカニズムを支持する。我々はWBGとIMFに対し、より良い再建に向け、政策支援や革新的な資金提供手法を活用しつつ、個々の状況に合わせて、LICsとMICs各国のニーズ分析を深化することを求める。我々はWBGに対し、パンデミックにより大きな打撃を受けたMICsに対する支援を評価することを求める。

  7. 我々は、結果の測定と報告を含む、WBGの気候変動行動計画(CCAP)を歓迎する。また、国が決定する貢献(NDCs)、生物多様性国家戦略及び行動計画に対する強固な支援を歓迎する。我々はWBGに対し、支援対象国において、新たな国別気候・開発報告書(CCDRs)を作成していくことを求める。CCDRsは、気候変動問題と、開発、そして貧困削減の間の繋がりを強化し、ギャップと必要な行動を明らかにするであろう。各国のNDCsに従い、我々はWBGに対し、他の国際開発金融機関(MDBs)と連携しつつ、明確なタイムラインや成果物、資金メカニズムを含め、パリ協定に準拠するにあたり、主導的な役割を担うことを期待する。WBGは、この気候関連の対応において、適応と緩和への資金提供に同様の重きを置くべきである。我々は、国毎の目標に沿って、次の5年間で平均35%にまで気候変動ファイナンスを増加させるというWBGのコミットメントに勇気づけられる。我々は、WBGに対し、民間セクターや国内資金からの更なる気候変動資金の動員により、効果を更に増大させるよう強く求める。我々は、WBGに、CCAPに基づいて、自然資本と生物多様性の保全を支援することを求める。我々は、WBGに対し、各国のエネルギーニーズ、能力、資産の組み合わせに応じた、各国の低炭素経済への公正な移行を支援することを強く求める。我々は、COP15(国連生物多様性条約第15回締約国会議)、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)会合に向けたWBGとIMFの重要な役割を支持する。我々は、WBGに、民間セクターの資金動員を増大させるための選択肢とメカニズムの策定に引き続き取組むことを求める。

  8. 我々は12月に野心的な国際開発協会(IDA)第20次増資を成立させることを約束し、交渉状況に勇気づけられる。IDA国は次のIDA期間において、非常に高い資金ニーズに直面する。我々は、政策と資金のパッケージがパンデミック後の回復を確実にするよう、全てのパートナーの連帯を求める。

  9. 我々は、WBGとIMFに、多くのMICsとLICsが債務・財政持続可能性を達成するための支援を行いつつ、債務データの質や一貫性の強化、債務開示の改善のためのプロセスを含む、債務の透明性と債務管理能力を強化するための調整に係る取組みを継続するよう奨励する。債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)が終了するにあたり、WBGとIMFがそれぞれのマンデートに沿って、パリクラブとともに、G20 「共通枠組」の実施に向けた支援を行うことを歓迎する。また、我々は、債務の脆弱性を踏まえ、「共通枠組」で述べられているとおり、MDBsが実施している取組みを想起する。

  10. 我々はIMFの6,500億ドル相当の特別引出権(SDR)の新規一般配分承認に勇気づけられる。これは、外貨準備の補完、信用の構築及び世界経済の強靱性と安定性を高めるための長期的なニーズに対応するものである。これは、特に、脆弱な国々がCOVID-19 危機に対処することを支援する。我々は、IMFとWBGに対し、各国がSDRを最大限活用し、自主的なSDRチャネリングの努力を支援・調整し、脆弱な国々の利益を最大化するため、それぞれのマンデートと比較優位を踏まえて協力することを求める。

  11. 我々は、WBGが資金を提供するオペレーションにおける、最高水準の透明性と説明責任に対するWBGのコミットメントを強く支持する。これは、WBGが資金を提供するプロジェクトにおける人々や環境の保護を拡大する、環境社会フレームワークやパフォーマンス・スタンダードの厳格な適用を含み、我々は、WBGがデューディリジェンス強化に取り組んでいることを歓迎する。また、WBGによる説明責任メカニズムの最近の改革の実施を歓迎する。

  12. また、我々は、WBGのオペレーションと研究における最高水準の透明性と説明責任に対するコミットメントを強く支持する。我々は、WBGに対し、データやナレッジプロダクトの誠実さと信頼を保証し、また、職員が報復を受けることなく、安心して不正行為を報告できるよう、敬意、包摂性、無差別の文化を育むための追加措置を講じることを期待する。我々は、困難な状況下でのWBGのミッションに対し献身的取組みがなされていることについて、職員を称賛する。

  13. 我々は、WBGの職員が、世界的な危機の間、支援対象国への支援増大のため、多大な努力を行ったことに感謝する。我々は、多様性、公平、包摂性、ジェンダー平等、人種差別への不寛容を引き続き促進することを通じて、職員が最善を尽くせるよう、組織のパフォーマンスや文化の向上に引き続き取り組むことにコミットする。

  14. また、我々は、IDA投票権や国際復興開発銀行(IBRD)・IFCの株式配分の見直しについて、WBG理事に感謝する。我々は、IDA投票権の見直しに関する最終報告書についてコンセンサスが得られたことを歓迎する。我々は、提案された新たな枠組みを受け入れて、来るIDA20増資における実施を求める。また、我々は、2020年の株式配分見直しに係る最終報告書を確認するとともに、次回見直しに向けた準備に係る技術的な業務のタイムラインを含む提案を受け入れる。我々は、リマ株式配分原則に沿って2025年に行われる予定の、次回の5年毎の株式配分見直しを期待する。

  15. 我々は、ミア・アモール・モトレー バルバドス首相兼財務大臣の過去1年間の開発委員会議長としてのガイダンス及びリーダーシップに感謝する。我々は、2021年11月から2022年10月までの期間、開発委員会議長を務めるアスセナ・アルベレチェ ウルグアイ経済財政大臣を歓迎する。

  16. 次の開発委員会は、ワシントンD.C.において、2022年4月22日に開催する。