中国:世界経済の巨大なリスク国家

中国:世界経済の巨大なリスク国家

今や中国は世界経済の巨大なリスク国家となっている。1990年代から中国の巨大な市場規模に目がくらみ、日本企業はともかく欧米の巨大資本が中国に投資されてきた。また日本の貿易相手国は今や米国を抜き去って中国がNO.1となっている。がしかし、中国経済は今や破綻寸前の状態ともいえる状況で、習近平は中国経済を牽引してきた浙江財閥系企業(鄧小平ー江沢民)の解体に動き始めていて、経済の主流を鉄鋼や食品と言った国営企業系に移そうとしている。それはつまり浙江財閥系企業を排除し、習近平派の企業に富を集約することによって自己の権力基盤を確立しようとする、極めて独裁的な経済支配なのだ。

今まで資本主義、自由市場主義を取りいれることで発展してきた中国経済は、今、世界経済を脅かしかねない大きな分岐点に差し掛かっている。

TPPを侵略しようとする中国

今夜、突然に降ってわいた「中国、TPP加盟申請」と言う記事。もちろんTPP(環太平洋経済連携協定)の委員会の議長国は日本なわけで、この正式申請を受けて、加盟を許可するのかを審査することになる。さてその中国だけど、2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟する条件は、WTOの規約を遵守することだった。その規約とは多義に渡るけれど、基本的にWTOに規定された関税率を遵守することと、国家の補助金によって自由で公平な競争を妨げない、という2点に絞られる。しかし加盟後20年以上を経過した現在でも、中国はWTO規約を遵守出来てはいないし、ほとんどするつもりもない。つまり、今回TPPに加盟したとしても、TPP規約を遵守するとは到底思えず、不公平な競争によって市場を拡大しようとするだけであることはミエミエである。


そもそも中国は、TPPに対抗する手段として「一帯一路」を推進してきたはずだが、現時点ではほぼ失敗したという評価になっていて、関連する途上国に対する不公正な資金援助を繰り返し、巨大な政府債務を背負わせたという批判が高まっていて、中国はその担保、または返済の代わりに、資金援助各国の権益を差し出させるという卑劣な手段を用いて財力で親中国を拡大しようとしている。差し押さえた資産は港湾であったり資源権益であったり、さらには中国企業進出の優遇措置だったりするわけで、TPPに加盟した後に規約も守らずに同様の行為を繰り返すのは火を見るよりも明らかである。だいたい自由のない独裁国家が、自由貿易協定に加盟するというのは、片腹痛いどころか、強引に占領した南沙諸島の権益を正当化するようなものだろう。下手をすれば、日本のシーレーンでさえ脅かされかねない状況も十分にある。

ところが日本国内にはこれを諸手を挙げて歓迎する親中派の政治家や大企業群(経団連)が存在し、政権と経産省に圧力をかけるだろう。そして加盟を許せば、TPPの主役は日本から中国になってしまうに違いない。せっかくここまで順調に推移してきて英国のTPP加盟もほぼ決まっているTPPを荒らされることは必至である以上、規約を守らないことを前提とした議論が行われない場合、日本の国益は大いに毀損されるだろう。

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不動産バブルの完全崩壊

10月14日、中国の不動産開発大手、中国恒大集団>は、株式の売却を通じて5億5500万ドルを調達したと発表した。写真は香港で2018年3月撮影(2020年 ロイター/Bobby Yip)

現在、急激にクローズアップされているのが中国不動産ディベロッパーのトップに君臨する恒大集団の債務危機である。すでに中国当局の関係筋から「20日に償還、返済期限の債務の利払いは停止される」という事前の観測記事が出回った。これは実質的なデフォルトであって、その混乱の拡大を防止するための予防措置であると考えられるが、国家が事前に利払い停止を通告するなど、資本主義、自由主義では考えられない事態である。

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恒大集団は年内に数兆円の債務返済・社債償還の期限を迎えるとされているが、その資金手当てが全く目途が立っておらず、現在当局に対し債務の75%を減免できるよう働きかけているとされる。恒大集団の債務残高は約30兆円と言われていて、その他理財商品や子会社債務を含む簿外債務は恐らく同額あると言われている。ちなみにその中には約2兆円規模のドル建て債も含まれる。よって実際の債務残高は約60兆円と言うことになる。

その75%減免と言うことになれば、約45兆円の債務を棒引きしたいと同義である。破綻したリーマンブラザーズの債務総額が約60兆円あったわけで、恒大単独の債務残高はほぼ同額と言うことになるが・・・。

中国には何も恒大集団だけでなく、もちろん不動産ディベロッパーは数多く存在するわけで、公にされている上位10社の債務総額は150兆円を超える。そして理財商品や子会社調達資金の債務を加えると、200兆円を優に超えるという巨大なものであり、そのどれもが恒大集団と同じような債務状況・財務状況にあることはまず間違いない。それはつまり、不動産開発のメインステージであった中国深圳市の不動産取引が前年比80%減であるという状況からも十分に推測できるし、さらにあまたある中国の不動産ディベロッパーの債務総額は300兆円以上と言われているのだ。

ここで恒大集団が破綻したとすると、表面化している30兆円の債務の他に約30兆円の簿外債務が表面化することに成り、中国経済は大混乱に陥るだけでなく、高利回りの約2兆円のドル建て社債、ユーロ建て社債はもちろん欧州系銀行の融資もすべて飛ぶことになる。また、不動産開発に関連した建設業や関連する同業他社の連鎖倒産など限りなく波及してゆくことになる。

そして不動産開発に対する信用がなくなって莫大な債務を抱える他社に波及することは必至である。だからこそ「大きすぎて潰せない」という作用が働き当局が支援すると、株式市場は楽観しているものの、もしも当局が支援するならば大量の人民元を発行しなければならず、人民元自体暴落する可能性もある。


中国に投資する米国ファンド

バイデン政権や米国財務省は、国内大型ファンドや個人投資向けに「中国投資は大きなリスクがある」と警告した。そして多くの投資資金がキャピタルフライトし、窓口である香港ハンセン市場では7月、8月、9月と連続で株価の急落が相次いだ。そして16日には下値の抵抗線であった25,000Pを割り込んでしまった。

にもかかわらず世界有数の投資ファンドであるブラックロックはなおも中国投資には過剰なリスクはない、とレポートを出しているが、それに対し「中国投資は自殺行為」と真っ向から対立しているのがジョージ・ソロスということになる。すでに老いていて自身のファンドでさえメインプレーヤーではないソロスが、敢えてこう主張している裏には、相当なリスクを感じ取っているのだろうと思う。

というわけで、仮に恒大集団がデフォルトし、不動産市場に大嵐がくれば、当然のことながら米系ファンドの中国投資は大きく棄損することになるし、場合によっては巷間ささやかれている「リーマンショック級」の金融危機でさえ、影響の波及の仕方によっては十分にあり得る話でもある。


中国のネット企業潰し

中国当局は自国の経済状況の悪化から、人民元の暴落の可能性を予知しているかのように、デジタル人民元の早期導入を画策している。そして導入に当たってはすべての人民の資金や資産の状況を把握し、国家による管理を目指している。その手始めとして、アリババが持つ膨大な個人情報を獲得するために、金融子会社のアントの上場を差し止め、共産党を批判したカリスマ経営者のジャック・マーを追い落とし、資産を差し押さえ、アリババの事業を分割・解体へと推し進めている。

またその範囲を未成年者にまで広げ、ネットゲームの大幅な規制(週3時間まで)を導入し、管理・課金するために収集した膨大なデータを押さると同時に、ネットでの学習塾や家庭教師を禁止して、未成年者の個人情報の収集に躍起になっている。

一部では、浙江財閥系の新興企業を解体するためと言われているが、本線はむしろデジタル人民元による国家管理を行うためのデータ収集にあると思っている。そうして収集された10億以上の個人データによって、共産党(習近平)は、個人の経済力をすべて掌握し国内経済を管理しようとしていると思われる。

にもかかわらず、日本企業の中国展開は止まらない。ユニクロ(ファーストリテーリング)は今後も年間100のペースで新規店舗を展開すると発表し、自動車メーカーは中国市場でのEVの販売拡大に躍起になっている。その他日本のあらゆる企業が、このような状況にも関わらず中国市場を強化しようとしているわけで、つまりそのことは、中国当局によって販売状況のすべてを近い将来把握されることになるわけだが・・・ここまで中国との関連が深くなった日本企業に対し、中国の不動産ディベロッパーの破綻の影響が出ないはずもない。


親中の総理は御免だ

今、自民党では総裁選が始まろうとしていて、次期総裁の立候補者は、岸田、河野、高市、野田の4名であるが、中国のTPP加盟審査は次期政権下で行われることになる。この4名の内、岸田、河野は親中派かまたは親中派の派閥の応援を得ているし、野田はそもそも第一回投票で過半数獲得を阻止するために立候補したも同然である。

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前評判では、河野、岸田の決選投票になる、と言われていて高市は決選投票に残れないとされているが、河野・岸田ならば中国のごり押しでのTPP加盟は実現してしまう可能性が濃厚なのだ。そして自民党内に多くの親中派議員がいる限り、唯一中国の横暴に対し、厳しい態度で臨める可能性のある高市の当選は非常に難しい状況である。

だが、岸田には、政策のポリシーは存在せず、財務省の操り人形となってしまい、河野は当選のために簡単に自己のポリシーを捨ててしまうために当選後、支持した議員や派閥に忖度せねばならず、自由な政策は全く出来ないだろう。

世の中は、安倍元総理の支配を極度に嫌う傾向があり、実質支配する派閥の細田派は岸田・高市で票を割ると言う・・・。となると、たとえ高市が決選投票に残ったとしても浅はかな議員の多くは高市に投票しないだろう。その結果それらの議員は、総選挙で敗れ後悔することになる。

仮に日本が、中国に対して毅然とした態度をとれるのは高市早苗以外には考えられないのだが・・・。そして日本が親中路線を変えない限り、中国リスクは常に日本市場にまとわりつくだろう。それはソフトバンクGの株価が端的に表している。