"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
世界で活躍した「航空工学の父」
1881年の今日(5月11日)、航空工学者セオドール・フォン・カルマン(Theodore von Kármán 、1881-1963)が誕生しました。
ハンガリーの首都・ブダペストに住むユダヤ人の家庭に生まれたカルマンは、ブダペスト王立工科大学(1918年までハンガリーは「王国」でした)を卒業後、留学先のドイツ・ゲッティンゲン大学で特別研究員となりました。飛行船の実験のための風洞(空気の流れを人工的に作りだす装置)を開発し、新興の学問であった航空工学にのめりこんでいきます。
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ユダヤ人への迫害が厳しくなったドイツを逃れて1930年にアメリカへ移住すると、カルマンはカリフォルニア工科大学(カルテック)の教授として活躍し、中国のロケット開発を主導することとなる銭学森(チエン・シュエセン。1911-2009)らを指導しました。また、より効率の良いエンジンの開発のためにジェット推進研究所(JPL)を設立したり、国際宇宙航行アカデミー(IAA)を設立したりするなど、研究体制の確立と後進の育成にも取り組み、その業績から「航空工学の父」と呼ばれています。
カルマンは流体力学や航空工学上の多くの概念に名を残していますが、中でも「カルマン渦列」が有名です。
彼は流体の流れの中に置かれた物体の後方に、いくつもの渦が規則正しく巻くことを発見しました。「風で旗がはためく」など自然界の多くの現象は、カルマン渦列が発生することで起こるのです。たとえば、島の風下側の雲にもカルマン渦列が現れることがあります。