自動車と半導体不足

自動車と半導体不足

半導体不足で、自動車メーカーがいよいよ苦し紛れに半導体を使う機能を削減し始めたというニュース。

日産車には下位モデルでナビを未搭載にすると言う。そのほかバックモニターを止めたり、テスラのような大型スクリーンの搭載を止めたり、メーターをアナログに切り替えたりするメーカーもあるという。素朴な疑問だけど、そうした場合価格は安くなるのかな?なんて思ったりもするよね。

でも、なぜ自動車メーカーはかくも大量の半導体を使うのか?っていう疑問は消えないよ。それに昨今の自動車メーカーは、なんだか方向性を見失ってる気がするよ。世界的に販売台数が伸びない時代になってきて、すべてのメーカーが高価格化・高付加価値化戦略に移行しているわけで、その最終的な目玉を自動運転に求めるとするならば、制御し辛いエンジンやミッションなどのアナログな装置は邪魔!みたいなことになって行くだろうし、その代わりEV化デジタル化で余分な機能を満載してそれを付加価値にしようということなのだろう。

まぁ、そんなことばかりやってると、やがて時代に足をすくわれることになるかもしれない。

大メーカーはテスラ病?

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僅かに年間18万台の販売台数であるテスラ株が、なんとトヨタの時価総額を抜いた、みたいなとんでもない状況になったけれど、18万台と言えば、比較の対象がないほど弱小メーカーの範疇で、イギリスのバックヤードビルダーに毛の生えた程度?であることは言うまでもない。

正直、テスラのイーロンマスクは、大メーカーを小馬鹿にした戦略を続けてる。ベンツであろうがトヨタであろうが、フェラーリやポルシェであろうが、車づくりの点で本当に「お前ら!どんだけ騙せば気が済むんだ!」みたいなメッセージがテスラ車には感じられるんだ。

いままで高級車・高性能者を販売するメーカーは、本当に数えきれないほどの蘊蓄を並べ立ててきた。時にはゼロヨン加速だったり、豪華な内装だったり、無駄極まる装備類だったり。そして車づくりの苦労話や創業者の逸話、開発者の情熱などあらゆる手段を使って消費者に訴えてきた。だからまるで伝統ある大メーカーは威厳のある、信頼できる企業として認識されていたし、自動車産業は今日の隆盛を維持してきた。

それを多分イーロンマスクは鼻で笑って「俺が簡単に覆して見せる」と思っていると思うし、「そんなのはEVにしてデジタル制御すれば簡単だ」と(明らかに)主張している。そして実は自らが工場をもってすべてを作り出すのではなく、近い将来にはAPPLEのようにフェブレス化を目指していると思う。テスラだけど、生産は日産、みたいなことに必ずなる。デジタルでノウハウを蓄積してブランド構築をすれば、販売台数はいくらでも増やせる、と思っているに違いない。

だから大メーカーはテスラを恐れているし、生き残りをかけて一斉にデジタル強化に乗り出しているわけで、そうなると半導体なんかは立ちどころに不足するのは当たり前なのだ。「武士は食わねど高楊枝」といった風情もあるけれど、そんなことはこの先続くものではないよ。

何千万も、1億、2億もするスーパーカーなど、テスラのセダンに加速でぶっちぎられているという惨めな事実を突きつけられてるわけだからね。

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低価格EVに踏み込まないと・・・

考えてみると、自動車ってそれほど魅力的な商品なのか?と疑いたくなる時代になったと思う。昔は、排ガス規制で大メーカーが虫の息だった時代を知っている俺としては、とにかく速い車は魅力的だった。当時、若かりし頃は(アクセルを)踏めども踏めども加速しないで唸っているだけの車に乗っていたから、発売されたばかりのトヨタ・ソアラに乗せてもらった時は、心底感動したものだった。そして馬鹿げてるとは思うけど、当時は「速い車に乗ること」が人生の目標のようにもなった。

夢は途中まで実現したし、チューニングすれば異次元の速さも獲得できることも知ったけれど、そうなればなったで今度は懸命にドラテクを磨いてみたり、そして高級な車もいいな、と思い始めたり。すっかり大メーカーの戦略に乗せられてた自分がいたよ。

大メーカーはそれでよかったんだね。自動車の世界を形作ってきたメディアにもレーサー崩れの評論家ばかりだったし、カー雑誌もCGを頂点に同じような内容のものばかり。それでもCGは特別な存在で、商品としてのデザインやコンセプトなどを紹介する記事が多かった。だが、欧州車礼賛的な体質は徐々に嫌になったけど。

そうして時代とともに形成されてきた自動車文化だけど、もうそんな時代の終焉がすぐそこまで来ているんだね。大衆的なセダンが500万もする意味不明の時代は長くは続かない。若い夫婦が2台の車を所有する時代であって、子供の教育費と住宅費でフルファイナンスする時代は、決して幸せとは言えないしね。そこにEV時代が到来するとどうなるか?言うまでもないこと。

それこそ、EVでは今までに経験したことのない価格競争時代がやってくると思うね。大きな設備でおびただしい部品点数のガソリンエンジンを作るよりも、複雑なミッションを作るよりも、モーターの回転数をデジタル制御する方がはるかに合理的だし、そうなると量産効果は飛躍的に向上し価格を引き下げる。モーターと電池とデジタル。ボディと足回りがあれば、自動車メーカーでなくても車ができる。実際、アップルもソニーも意欲満々だし、現在の大メーカーでも割り切る企業も登場するはず。ホンダが2040年までにガソリンエンジン全廃を打ち出したけれど、10年早まるかもしれない。

いずれにしても大メーカーは、低価格EV市場に踏み込まなくては生き残れない時代が忍び寄っているのは間違いないよね。そのとき、イーロンマスクはどうするか・・・目に見えるような気がする。

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空前の半導体需要がくる!?

これからの時代、間違いなく半導体は国家の戦略物資になってゆく。半導体が不足するのは何も自動車のデジタル化だけのせいではなくて、5G、6G時代の到来とともにあらゆる産業で、しかも驚異的なスピードでデジタル化が進む以外に考えられない。そしてあらゆるデータをクラウドに任せる時代さえ大きく変貌する可能性が高いと思う。

例えると、国家の存続のために各国は軍隊を持っているわけだが、同様に極めて大規模なデータセンターを自国内に持つことが、独立国家の必須条件のよになると思う。たとえクラウドでも海外のサーバーに頼っているのはあまりにリスクが高すぎる、と考える時代になるということだ。自国のデジタル資産は自国で守るのが基本であるという発想が出来なければ、先進国とは言えない時代だよね。

5Gになれば飛躍的にデータ通信量が増えて、6Gになるとそれこそ今の数億倍の通信キャパが生まれると言われる。しかし考えてみれば、半導体は予想されているように年率5%や10%の需要増で済むはずがないんだよね。スマホだけでなくあらゆる電気製品がデジタル端末になり、膨大なデータが流れ出すことを考えると、半導体はいくらあっても慢性的に供給不足という時代にもはや突入したのではないか?と思っている。

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投資すべきは半導体!?

いま世界はある意味では危機的状況にあると言える。なぜなら世界の半導体メーカーで最先端半導体(3ナノ)を製造できるのは台湾のTSMCで韓国のSAMSUNGは2022年までに、としているから。つまり台湾と韓国に最先端半導体は抑えられていると言っても過言ではない状況だ。販売首位のINTELは3ナノはおろか5ナノにも踏み込まず、という方針を米国政府主導で最近改めたばかりなので・・・。ここでいう微細化という点では、3ナノ、5ナノ、7ナノは2強でインテルが食い込めるのか?という事なのだが、3ナノは微細化の限界といわれそれ以降は積層化になると言われている。

今米国はこうした状況を国家的危機と捉えているし、だからこそINTELに最先端半導体の自社生産を強硬に要請したり、台湾問題に深くかかわろうとしているわけだ。

しかし実際に供給不足になっているのは、32、22、14、10(ナノ)といった一世代も二世代も前のもので、自動車や家電、その他のデジタル機器ではこのレベルの半導体が欲しいわけだが、いまさら容易には生産キャパを引き上げるメーカーがいないということに尽きる。世代遅れの半導体に投資しても償却ができないという事情があるからだ。

つまり、現在の半導体不足は現行の生産能力不足によって起きているわけで、半導体不足の解消は簡単ではないことはあきらかな以上、市況は徐々に値上がりするのは避けられない。そうした事情から、今後は半導体市況は値上がりの傾向でしかも供給能力に限界があるとなると・・・株式投資は半導体の素材関連が有望で、しかも太陽光パネルに大量に使われ、すでに供給不足が始まっている多結晶シリコンは特に有望と見るのだが・・・。

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