急落した株式市場の現状を考える

急落した株式市場の現状を考える

日経平均が▲¥1,202と結構な下げを演じた晩に、NYダウは▲$469の続落で週末の取引を終えた。日経平均は流石にCFDで戻して¥283高。¥29,249となんとか¥28,000台を離脱した格好になりそうではある。

米国債売りの犯人捜し

ブルームバーグの記事では、国債長期金利急上昇は単純にテクニカルの問題としている。この間推定で5兆3000億円の売り物が出たということ。そしてその要因の一つは7年債の入札が記録的な不調だったことがトリガーになったと。現在米国債10年物金利は1.417BPに落ち着いているけれど、これからバイデン政権の200兆円景気対策があり、さらに3月には次の政策を発表すると言っているわけで、そうなると大量の国債発行が予想され、この10年債金利は再度上昇する可能性が濃厚という懸念が投資家にはある。

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そうした背景で結局のところ記事では、誰が持ち高解消したのかは分からないが、テクニカルな要因であると結論付けている。ということは、何もわかっていないに等しいわけだ。

今、米国連邦政府の債務は、とんでもなく巨額に膨れ上がっていて、2020年末時点で2,820兆円と公式に発表されているが、これは各国の財政算出基準がマチマチで単純比較はできないけれど、日本基準で考えると4,000兆円は軽く突破していると言われる巨額なもの。

今回の新型コロナ禍で、トランプ政権も460兆円という膨大な対策費用を計上したわけだが、さらに間もなくバイデン政権は200兆円対策費を計上し、大統領選挙での公約では500兆円の追加的なインフラ投資、再生可能エネルギー投資、バイデンケアを発表している。民主党政権になって、財政赤字は急激に増加するという懸念を投資家が抱き、10年国債の売り場を探っていたことは間違いなかったと思われる。

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FRBも財務省も財政赤字・政府債務は気にするなと言うが・・・

FRBのパウエル議長もイエレン財務長官も、財政赤字を気にするよりも景気を立て直すことを最優先するべきだ、と発言している。とにかくコロナ禍で落ち込んだ雇用を立て直すことこそが最重要課題だというわけだ。しかしバイデン政権は同時に数百万人という移民(含む不法移民)に対し、市民権を与えると公言し、最低賃金を¥1,500以上にすると公約しているわけで、これはどう見ても著しい相反である。

こうした政策を3年前にEUが行ったわけだが、結果は全く効果がなかったばかりか、社会が荒れたわけで、それが英国のEU離脱に繋がったことは、米国にとって決して過去の歴史ではない。結局EUは移民を制限せざるを得なくなってしまったし、景気は過度のECBのマイナス金利でかろうじて崩壊を免れているというった状態だ。

そういうことを考慮するとバイデンの経済政策が如何に矛盾に満ちたものかが分かる。そして、もう一つ極めて深刻な問題が、中銀発行の仮想通貨の導入だ。これは言い換えれば流動性を持った第二の通貨であって、いち早く導入を目論んでいるのは中国と英国だ。ECBとFRBは現時点ではその影響を試算している最中と言われていて、これが現行経済にどのような影響を与えるのか、極めて慎重になっている。

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だがイングランド銀行は、公式な声明の中で、「現在の仮想通貨は資産価値ゼロになる可能性が在る」と言い始めている。このことは(政府仮想通貨の導入が)恐らくかなり煮詰まった段階になっているのでは?と思われる。さらに、米国当局者の財政赤字・政府債務は気にするな、という数々の発言は、中銀の資産残高を仮想通貨の担保として考えるという事なのではないか?

そうしたことをそろそろ考え始めねばならない時期に来ているということで、政府系ファンドやオイルマネーファンドは、今後の米国債保有に慎重になるということもあるだろう。

株式市場のトレンドが変わるのか?

日本市場(日経225)の今期予想EPSは¥1,329で、26日引け値の日経平均株価¥28,966ではPER21.8となった。そしてPBRは1.26となってほぼ上限である1.3を下回った。ちなみに米国ダウは現行株価($30,932)でPER31の水準である。

米国ダウは25日、26日の2日間の下げて、▲$559、▲$469となり都合▲$1,028下げた。片や日経平均は、25日に前夜の米国市場を受けて¥484高と大幅高したために、昨日(26日)の暴落で辻褄を合わせてきた格好。

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日経平均日足チャート

現在日経平均はCFDを考慮すれば¥29,249という位置で、これは昨日(26日)の引け値¥28,966の¥283高となる。米国債10年物金利が下げたおかげで、マインドはそれほど悪くはないと思うが、3月月初の取引では積極的な買い方は出ないという事情もあって、GUスタートで陰線になる確率が高いと思う。

昨日は▲¥1.202という大幅な下落となったが、9983ファストリ¥105,000(▲4.15%)8035東京エレクトロン¥43,550(▲4.70%)6594日本電産¥13,520(▲4.18%)6367ダイキン¥20,720(▲6.64%)7974任天堂¥64,750(▲5.28%)6954ファナック¥26,340(▲5.20%)4063信越化学¥17,350(▲4.27%)6762TDK¥15,240(▲5.04%)、そして6758ソニー¥11,120(▲3.88%)9984SBG¥9,895(▲4.53%)と、主要な値嵩株がほぼ例外なく売られたということからして、日経平均の調整モードは本格的になってきたと見るべきかもしれない。

なぜなら主要値嵩株を買わない限り日経平均の上昇は望めないからだ。そしてMACDも売り転換を示唆しているし、機関投資家の益出しもとりあえず来週半ばまでは出てくる可能性が高い。

しかし、主要株の来期予想等を加味した場合、過度の深押しは現段階では考えられず、3月相場は当面は日経平均¥29,000をはさむような揉み合いになるのではないか?と思う。だが値嵩株には高PERのものが多く、ある程度水準訂正になると考えた場合には75日線までの深押しもあり得るわけで、米国ダウがPER31と高いことを考えると、ここから先は米国との連動制が高まるのではないか?と思われる。

ちなみにNASDAQ100の現時点でのPERは29.3であって、これは日本市場の半導体・電子部品銘柄とほぼ同等である。

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米国ダウ日足チャート

2日間で約$1,000の下落となった米国ダウだが、結果的にはバイデン政権のMMTばりの景気対策がもたらした長期金利上昇が仇となった観がある。「財政当局は過度なインフレにならなければ、赤字は気にする必要はなくいくらでも財政支出を行って景気対策すべき」というMMTは、今となっては民主党政権の経済政策の裏付けとなっているけれど、それをマーケットは長期金利上昇によって牽制したと言える。

なので一旦は落ち着きを見せた米国債10年物金利だが、200兆円対策が議会を通過すれば、再度上昇する可能性はかなりあるだろう。

株式市場は今後もそのことを懸念しながらの相場となるのは間違いなく、ダウの3月は$30,000をボトムにしての揉み合いになるかもしれない。以降は恐らく全体相場の底上げというよりも、かなり資金が好業績銘柄に偏った上昇と言うことになるかもしれないし、景気回復を見込んで先行してコモディティが上昇するようならば、相場の景色は変わってくるだろうと思う。

要は株式市場が長期金利の上昇を2.0%程度まで織り込む相場になるかもしれない。

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理想は景気対策とFRBの買いオペ

来週にもバイデンの200兆円予算は議会を通過する見込みで、そのタイミングでFRBが10年物国債の買いオペを行う事をアナウンスするようならば、再び相場は上値追いを開始するかもしれない。

一方の日本市場は、3月は新型コロナ後の業績期待で例年になく買いが旺盛かもしれない。期末配当はすでにそれほど意識されることはないだろうけど、買いは割安の好業績銘柄に集中するだろう。グロースは売りが先行するので、厳しいかもしれない。

いずれにしても日米ともに、調整場面では買いが入りやすい先高感の高い状況になりつつある。シンプルに買ったら勝てる相場かもしれない。

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