2020.12.04
# 宇宙科学

地球帰還まであと2日!「はやぶさ2」が成し遂げた「宇宙史」的快挙

生命の「由来」を知るための旅

12月6日、いよいよ小惑星探査機「はやぶさ2」が約3億km彼方の小惑星リュウグウで採った貴重なサンプル(試料)を地球に持ち帰る。初代「はやぶさ」からミッションを取材、科学的に正確に探査の詳細を描きながら、「はやぶさ」に単なる機械を超えた繋がりを感じさせる唯一無二の映像作品を発表してきたのが、上坂浩光監督だ。

新作『劇場版HAYABUSA2~REBORN』を発表した上坂監督に「はやぶさ2」の魅力と、この前人未踏のミッションが私たちにもたらすものについて聞きました。

上坂浩光監督
上坂浩光(こうさか・ひろみつ)1960年生まれ。CG黎明期から独自に3Dソフトウェアを開発し、CG映像制作を行う。1997年、有限会社ライブ設立。監督を務めた『HAYABUSA―BACK TO THE EARTH-』は第52回科学技術映像祭・文部科学大臣賞、映文連アワード2011・最優秀作品賞などを受賞。「はやぶさ」「はやぶさ2」を描いたプラネタリウムフルドーム映像作品3部作の完結編となる『HAYABUSA2~REBORN』劇場版・プラネタリム版が全国の映画館や科学館で上映中
 

「はやぶさ」に命が宿る

――上坂監督が小惑星探査機「はやぶさ」、「はやぶさ2」を描いた作品は本作で3作目になります。そもそも「はやぶさ」の映像を作ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

上坂監督(以下、上坂):きっかけは2006年末「はやぶさ」の別の映像作品(「祈り」)にCGの映像演出として誘われたことです。打ち合わせで宇宙研(JAXA宇宙科学研究所)に伺うと、「はやぶさ」のイオンエンジンを開発した國中均さん(現宇宙研所長)たちが、初対面の僕にすごく親切に色々なことを教えてくれました。

僕が素人の考えで疑問点をあげると、「確かにそうかもしれないね」とチーム同士の議論が始まる。仲間にしてくれたような喜びがありましたし、何より、彼らが人生をかけてミッションに取り組んでいるのがひしひしと伝わってきました。とにかく魅力的な人たち、魅力的なミッションだった。

そして数ヶ月後、実際の映像制作が進み、簡易CGが出来上がりました。その映像の最終チェックしているとき、不思議なことが起こったのです。帰還のため地球に向かう「はやぶさ」の後ろ姿を見て、涙が出たんです。

(c)HAYABUSA2〜REBORN製作委員会

――魅力的な人たちが作った機械である「はやぶさ」に、命が宿ったような?

上坂:はい。物の向こうに作った人が何を考えて何を大事にしているか、透けて見える。僕はその映像を感情移入させようとして作ったわけではありません。事実を淡々と描いた映像で「はやぶさ」に人格を感じて涙が出たという事は、そういう感情をコアにして作れば、ミッションや科学にあまり興味がない人にも、間口を広げることになるんじゃないかなと思ったんです。

その後、自分が監督となり全天周映像『HAYABUSA-BACK TO THE EARTH-』を制作しました。プラネタリウム番組としては異色でしたが、公開するとそれまで宇宙に興味のなかった一般の方も大勢見て下さって、理解してくれましたね。

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