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日時 令和2年11月26日(木)10:30~11:50

場所 財務省 国際会議室 (オンライン開催)

内容

1. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて
2. 令和3年度国債発行計画等の策定に向けた現状と課題について

○令和3年度国債発行計画等の策定に向けた現状と課題について、理財局から以下のように説明を行った。

・令和3年度国債発行計画等の策定に向けた現状と課題について、国の債務管理の在り方に関する懇談会の資料等を用いて説明し、11月4日に開催された国の債務管理の在り方に関する懇談会において委員からいただいた意見を紹介する。

(新型コロナ対応後の国債発行を取り巻く現状と課題)
・1次・2次補正で約100兆円の増額をしたことで、発行総額は約253兆円と過去最大規模となっている。その調達に当たっては、短期債を中心に増額を行ったところ。留意すべきこととしては、短期債は来年度に償還が到来するため、借り換える必要がある。

・イールドカーブは、コロナ前と比べると若干、ベアスティープ化している形。

・内閣府の中長期試算に基づいて国債発行額の将来推計を行っているが、令和3年度以降も令和2年度の2次補正後発行計画の年限構成割合を維持したものとして試算すると、来年度以降も、それなりの規模で短期債の発行が続いていくこととなり、その結果、今後も借換債の金額ひいては全体の発行総額が同程度の水準で続いていくという見込みになっている。

・したがって、今後、様々な経済状況などを見ながらではあるが、コロナが落ち着いて、発行総額を減少させていけるようなフェーズになった場合においては、今回、増額した短期債の減額を通じて、借換債発行額の抑制に努めながら、市場のニーズを踏まえた発行年限割合等を考えていく必要があると考えている。

・コスト・アット・リスク分析を行って、コロナ前とコロナ後の発行計画でコストとリスクにどのような変化があったかを見たところ、今回、100兆円規模の大増額をしたことにより、結果的にコストとリスクがともに増加するという結果になっている。ただ、短期債を中心に増額したことで、コストの平均値は思ったほど増えていない一方、借換えに伴う今後の金利変動リスクの方は大きく増えている、という格好になっている。

・基本的にはコストとリスクはトレードオフの関係にあるが、今回は両方とも増えている。これは、発行総額自体が大きく増えたことによるものであり、今後、増大したコストとリスクを両方とも縮小していくという観点からは、まずは国債発行総額全体を抑制していくことが大前提になる。その中で、市場ニーズを踏まえた発行年限を考えていくことが重要。

・前倒債の活用については、これまでリーマンショックや東日本大震災等、様々なショックがあったときには、短期的に国債を増額しなければならないことがあるわけだが、発行総額が急激に変化する状況においても、前倒債を活用することによって、カレンダーベース市中発行総額は急激に変化しないよう努めてきたところ。今後も、こうした前倒債の機能を踏まえて国債発行を考えていく必要があると考えている。

・日本銀行の国債買入比率を見ると、イールドカーブ・コントロールの導入後、基本的に国債買入比率は低下傾向にあったが、足元では、特にイールドカーブ・コントロールの対象である10年以下の部分は、短期的に買入比率が増加しているのが見て取れる。他方、10年超の部分はそれほど大きな変化はなく、トレンドが維持されている。こうした日本銀行による金融政策、国債買入の考え方・スタンスが国債市場や金利に与える影響にも留意する必要がある。

・銀行は、近年、国債の保有比率を減らしてきたが、足元では下げ止まってきているように見え、直近では少し反転し増加している。これは、担保需要の増加が寄与していると考えられる。

・生命保険会社については、2025年のICS(国際資本基準)導入に向けて資産と負債のデュレーション・ギャップを埋める観点から、超長期債に対するニーズが一定程度存在すると考えられる。その中で、2025年に向けた買入ペースがどうなっていくのか、あるいは、2025年以前と以後で、どのようなニーズの変化が出てくるのかといった点も注視していく必要があると考えている。

・新型コロナ発生後、政府の緊急事態宣言に伴い、出勤制限やテレワーク等が行われたことや、投資家のリスク回避的な急激な動きが見られたことがあり、国債市場でも不確実な状況が見て取れた。今後も、今回のような異例な事態が起きることはあり得るということを前提にして、そうした状況下においても着実に国債の発行・消化ができるよう、それぞれの立場でBCP体制の強化を意識していく必要があるのではないかと考えている。

(国の債務管理の在り方に関する懇談会[11月4日]における主な意見)
・発行年限構成について、今後は、短期債に発行を寄せ過ぎている状況を平準化していくフェーズであるが、超長期ゾーンの発行に関しては、その需要は今後も拡大していくものの金利リスク量という点で十分な配慮が必要といった意見や、今後新規国債の発行が減少する中においては、今回大量発行した短期債の償還を進め、平均償還年限の長期化を進めることになると思われるといった意見をいただいた。

・財政規律について、国の競争力としての経常収支と財政規律という意識を官民ともに持つことが重要であり、今後の追加的な対応余地を持ち得るために、財政規律も含めたメッセージを市場からも発出していくことが重要であるといった意見や、国債発行に当たって市場のニーズも見ながら、発行に係るコストとリスクのバランスを取っていくことが望ましいが、同時に、財政規律に対する姿勢について国内外から誤解を招かないよう、丁寧なコミュニケーションを意識するべきといった意見をいただいた。

・その他、新型コロナに伴う緊急事態宣言の下で市場の不確実性が高まったことも受け、官民共にBCP体制の強化に取り組む必要があるというご意見をいただいた。

・今後、第3次補正予算が編成され、その規模次第では更なる市中増額の必要が生じる可能性があること、また、令和3年度では今年度増額した短期債の償還・借換が到来する分、借換債発行額が増大することも踏まえ、皆様と丁寧に対話を行いながら、国債発行計画の策定を行ってまいりたい。

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・新型コロナ対策のため短期国債を大きく増額したところ、直近の入札の状況を見ても、市中で特段大きな混乱はなく、国債金利は安定的に推移していると認識。当社の運用スタンスについては、従前からあまり大きな変更はなく、マイナス金利の債券を購入するインセンティブはないため、現状のイールドカーブの10年債以降を対象として、20年債を中心に運用するとともに、国内債、国債等だけでは収益的に厳しいことから、海外国債等の海外資産への分散投資を行っている。
・今後の運用の方向性について、20年債はALMの観点からバランスが悪いと認識している。現状、日本銀行の金融政策がすぐ変更になるとは考えておらず、購入した20年債をすべて満期まで持ち切るという運用には必ずしもならないだろうが、当面、こうした年限を中心に購入していく予定。
・来年度の国債発行計画に関して、補正予算の状況にもよるが、大きく増額しないことがベストだと考える。急激な金利上昇は避けるべきである一方、イールドカーブはある程度立っていた方が投資家としては運用の幅が広がることから、他の投資家のニーズも踏まえつつ、長い年限の国債の発行額を増やしてもらいたい。
・今後の中長期的な預金のフローについて、当社では高齢者の方々の預金が大部分であるため、あまり預金が大きく増加することは考えにくい。直近の状況は、コロナ関係の資金が滞留しており、預金が大幅に増加、貸出も伸びてはいるものの、預金の増加には及ばないので、余裕資金が増えている状況。

・大手行のバランス・シートでは、預金がかなり増えている。この結果、資金余剰が拡大している。
・短中期ゾーンでは、担保目的のニーズが足元でも継続している。超長期ゾーンでは、資金収益を確保するという観点から、イールドカーブ・コントロール下でゼロ%に固定されている10年債よりも長い債券のニーズは強い。また、ポートフォリオの中には比較的売買の回転が速い部分もあるため、中期~残存10年辺りのゾーンのイールドカーブの立ち方もロールダウンを取るという点では一定程度の魅力があるため、結局、色々な年限に対する多様かつ安定的な投資を行っている状況。
・ALMの正常な形からすると、資金収益の観点から超長期債での運用というのはあまり望ましい形ではなく、本来的には中期から残存10年のゾーンで運用を組み立てるのがバランスの観点からはよい。このため、かなり先の話になるかもしれないが、将来的な金融政策の正常化の過程で、イールドカーブ・コントロールが外れて中期ゾーンから金利がプラスに持ち上がるような状況になれば、かつてのように、中期債から10年債辺りに国債運用を切り替えることによって、ALM運営を主体的に正常化させることができるようになると考えている。
・当面は、引き続き、外債運用等をかなりのボリュームで併用していくこととなる。

・当社では、主に10年債以上の債券で、イールドカーブ上のキャリーとロールが有利なセクターに投資を行っている一方、10年債未満の債券については、リターンがリスクに見合わなくなってきており、バランスシートを縮小している。日本銀行のイールドカーブ・コントロールにより、10年債の金利がゼロ%近傍から変動しにくくなってきているため、投資家としては、20年債等のより利回りの大きい年限にしていかなくてはいけない状況にある。
・日本銀行の金融政策が長期化するという前提の下、国債の高水準での発行が続く中、財政規律の維持に対するマーケットの信認が揺らぐことがないのか、景気変動に伴うリスク以外のマーケットの大前提が揺らぐことがないのか、警戒しておかなくてはならない。来年度の国債発行計画の策定を短期的な視点で行うのであれば、現状の投資家ニーズに合わせた発行計画を策定すればよいが、大量の借換債の発行が今後も続く状況では、予見可能な形で国債発行計画が策定されること、財政規律が維持されているという人々からの信認が非常に重要であり、マーケットの大前提となっている。ひとたび、財政は自由に拡張できて、日本銀行は金利を上げないと人々に思われると、物価水準の財政理論のとおり、物価水準は大きく修正され、通貨価値は下落すると考えられる。そのような国において財政規律の信認が人々から再び得られるだろうか。現実的にはそのようなことを当局が意図的に行うとは全く考えていないものの、人々がこうした状況に近い状況が揃っていると認識した時点で調整は始まってしまうため、そうしたことにならないよう、しっかりとしたメッセージを発信していくことが重要だと考える。
・長期的な金利の見通しを踏まえた投資の方向性について、一般的に金利のボラティリティは、より長期の債券の方があまり変動せず、より短い債券の方が金融政策あるいは景気変動に従ってより大きく変動する一方、日本ではそうではないことが多々あり、より長期の債券金利に大きな変動がみられることがある。当社では、5年後、10年後にインフレが起こるのではないかという市場の期待に対するヘッジとして、物価連動債は良いヘッジになると考えている。現状、物価連動債の発行額はかなり抑えられているところ、物価連動債の発行額を早急に増額してほしい。
・仮に日本国債の格付がシングルAから格下げとなった場合、当社の投資家次第ではあるが、投資スタンスは大きく変わると考える。シングルAを下回るようなところには債券投資してほしくないという顧客がいることや、購入した国債をレポに出す際に、レポのカウンターパーティーが制約されることから、バランスシートを縮小せざるを得ない状況になると考えられる。

・今年7月以降、国債発行額が増額されたものの、10年以下の国債金利については、日銀買入オペ等を背景として非常に安定して推移しており、10年以上の長期・超長期ゾーンについても、投資家のイールドハントの動きや、生命保険会社のALM上の長期化ニーズといった非常に強い投資家需要に支えられ、全般的に金利の上昇幅は限定的だったと認識している。
・こうした市場の環境については、今後も引き続き継続していくとみている。現在の金利水準は非常に低いという認識であり、負債コストと照らしてみると中々本格的な投資をする状況にはないものの、生命保険会社のALM上の観点から超長期国債へのニーズは引き続き非常に強く、一定の投資は継続していく予定。
・足元の経済環境を考えると、金利が本格的に上昇するような環境となるには少々時間がかかると考えているが、仮にインフレが起こって金利が上昇した場合、生命保険会社の新契約の負債コストもそれに連動して上昇していくものの、既に保有しているストック部分が大きく、負債コストの上昇には遅効性があることを踏まえると、金利が上昇する際には、今よりも思い切った超長期ゾーンへの国債投資ができるのではないかと考えている。
・当社では、負債コストが円金利であるため、外国債券への投資については、通貨スワップ等を使用して円金利に戻す形で投資している。今は海外金利も非常に低くなっている状況ではあるが、海外マーケットの方が金利が取れる場合もあるため、日本の国債金利と海外金利を比較しながら投資先を決めている。

・足元の運用の方向性について、金利が非常に低水準であることから国債への新規投資はほとんどしていない状況。運用の中心はある程度のスプレッドがある外債であり、国債については担保繰りに必要な範囲で購入しているところ。購入している国債の年限としては10年債から20年債のゾーンで、20年債の方が金利リスクがより大きくなるところ、運用全体のバランスを見ながら担保繰りに必要なものを購入している。
・中長期的な投資の考え方として、少子化、人口減少という課題を踏まえると、今後預金の量が大きくは増加しないという前提で運用計画を考えており、仮に円金利の水準がコロナ前に戻ったとしても、国債の需要はそれほど大きく増えないのではないか。
・外債での運用には調達コストや流動性の問題等もあるため、今後、金融政策が正常化し、円の短期金利もある程度プラスになるような場合には、より安全で流動性の高い日本国債に戻ってくることになろう。

・預金が積み上がっている地域金融機関が増えていることから、マイナス金利の商品は買いたくないという考えが強い一方、残存10年以上のプラス金利の国債に対する買い意欲は強いと思われる。
・金融政策が正常化して金利が上がる場合、貸出金利が上がることになるので、収益環境が大きく変わることになる。したがって、国債投資についてはその点を勘案しつつ行うことになるが、仮に短中期ゾーンがプラス圏に浮上するということであれば、あえて超長期ゾーンを買う必要がなくなり、デュレーションを合わせにいくことができるので、運用の選択肢が拡がる。

・国内の超低金利の継続が最も大きなリスクと捉えており、その認識は従前より変わっていない。その対応として、この10年間、一貫して海外クレジットを中心とした国際分散投資を推進しつつ、一部、オルタナティブ等を交えて投資効率を高めていく、ということを続けている。日本国債については、やはりマイナス金利導入以降は預金(負債)のデュレーションリスクをどのようにコントロールするかという観点から、国債や社債の購入を行っている。足元はマイナス金利であるため、基本的には長期・超長期ゾーンの国債購入を中心としたALM運営となっている。
・日本の金融緩和の正常化は容易ではないとの認識だが、米国は先に量的緩和解除への期待が高まる可能性が十分にあると思っている。その影響で多少、スティープ化を伴いながら日本の金利水準の調整があるのではないかと期待している。
・先行きイールドカーブ・コントロールが終了した場合には、今までマイナスで手が出せなかったゾーンの金利が上がり、預金のデュレーションを考慮した形でALM運営を行うことが容易になるため、国際分散投資に占める国内資産比率を戻しつつ、日本国債の中では短中期ゾーンに資金が回帰していくことになる。勿論、金利水準がどこまで戻ってくるのか次第である。
・将来のインフレに備えているのかと問われると、基本的にインフレの質・程度にもよるが、それに伴い金利が上昇した方がメリットが大きいということもあるので、ALM運営上はそれほどインフレの心配しておらず、むしろ、冒頭申し上げた通り、現時点ではマイナス金利の継続への対応が最優先課題ということになる。
・預金が急激に増えたという感じはない。ただ、コロナ禍でお金を使わなくなった部分がやや滞留しているほか、特別定額給付金が支払われたタイミングでは増えたが、その後は横ばい程度である。
・超長期債の購入により資産と負債のデュレーションのミスマッチはあるが、お客様からは非常に長期で預金していただいているため、基本的に負債のデュレーションは一定である一方、資産のデュレーションは経年で短期化する点も念頭に入れた上で長期的な視点からALM運営を行っている。

・各国で積極的な金融緩和が行われており、グローバルに金利が極端に低下している状況の下、当社としても運用が大変厳しい状況。当社の負債側の特性上、金利リスクが経営上大きなリスクとなっており、金利リスクのヘッジという観点から超長期ゾーンの国債を主体に運用をしているところ。
・しかしながら、あまりにも円の金利水準が低いことから、少しでも負債コストを補っていくために、円金利資産以外の割合を高めることも検討せざるを得ない状況になっている。
・今後、金融政策が正常化した場合でも、超長期ゾーンの国債を主体とした運用は、おそらく変わらないと考えている。
・また、現在は金利が低いため、貯蓄性の高い資金があまり集まらない状況であるが、今後、金利が上昇していく場合、そうした資金が増加していくようであれば、それに応じて円金利資産を増やすこととなる見込み。
・インフレについて、当社では、インフレの発現は当面ないと見ており、インフレの発現を想定した運用は今のところ行っていない。

・コロナ禍で経済が大きく落ち込んだが、足元では、ワクチンの開発期待から、将来の回復期待が高まっている。落ち込んだ時期についても、各国政府・中央銀行が対応したことによって、当初恐れていたよりも悪い状況にはならなかった。足元の現実と将来への期待のギャップが、過大なのか適切なのかは現時点で中々評価が難しいが、恐らくそう遠くない将来にワクチンが流通するであろうという分かりやすい期待であるため、このギャップは維持されやすいと考えている。
・日本銀行の金融政策については、将来の期待ではなく足元の現実に対処するものと理解しており、現在のイールドカーブ・コントロールが継続する下で、国債金利については現状程度の低位安定が当面続くだろう。コロナが収束した場合を想定しても、財政政策の正常化が先で、金融政策の正常化はその後であると考える。各国で財政が悪化したことから、国債金利が名目成長率を大きく下回る水準に長期間維持される必要があるとみている。
・コロナ後の経済環境に関連して、政府や民間で膨らんだ債務がインフレ的に作用するのか、それともディスインフレ的に作用するのか強い関心を持っている。コロナが収束した後には、恐らく消費ブームが起きると考えているが、一方で、この間に各経済主体で膨張した意図せざる債務の削減が優先される結果、中長期的にはディスインフレ的に作用する可能性の方が高いだろう。
・日本国債がAから格下げされてしまった場合でも、恐らく国内の顧客にはそれほど影響がないものと推測する。一方、海外から日本国債に投資する顧客には相応に影響するというのが現時点の感触である。

・グローバルに金融緩和姿勢が強まるとともに積極的な財政出動が行われる中、低金利環境が続いているところ、足元ではイールドカーブはスティープ化の傾向が見られる。今後、新型コロナワクチンの開発が進んでいくと、ワクチンの普及・実用化、これに伴う世界経済の平時への回帰といったことを想定する必要があり、金融市場で現在発生している事象が転換するリスクがある。現状のマーケットの動きがずっと続くということではないと考えている。
・日本国債市場については、金融政策においてマイナス金利の深堀り、短期金利の引下げが予想しづらい中で、現在、第3次補正予算の規模、国債発行計画の行方が強く意識されており、マーケットはその行方を待っているという状況。
・今後の運用の方向性について、現在は負債に合わせて円建て債券、特に日本国債の30年債を中心に運用しているところ、今後も当面は同様の方向性で運用していく予定。償還が来る債券については、その再投資の観点から満期の長い債券への入替を行っていく。以前は、円建て債券のほか、ヘッジ外債も積極的に活用していたところ、為替のヘッジコストは低下している一方、外債の利回りが大きく低下しているため、トータルで見ると投資妙味が薄れてきている。
・足元では非常に厳しい低金利環境にあるところ、保険の新商品の開発・販売ができていない状況。今後、仮に金利が上昇した場合、新商品の開発・販売が進む可能性。ただし、平時に戻るまでにはかなり時間がかかると考えられるところ、平時を見据えて段階的に投資の方向性、超長期債の購入の方向性等を見直していくことが必要。

・当社では、従来通り、円建ての負債に関しては円建ての債券に投資するというALMの方針を引き続き堅持している。円建て以外の負債に関しては、利回りを追求する観点から外債に投資する方針を取っている。
・円建て債券への投資については、国債利回りがマイナスの年限については、当社にはマイナス利回りの債券に投資するニーズはないため、なるべく一般債に投資しプラス利回りを確保するとともに、国債利回りがプラスになっている10年以上の年限については日本国債に投資するという、ゾーン別の投資を行っているのが現状。
・直近の運用状況としては、利回りが低いこともあり、中々長期の保険販売が進まないということもあるため、新規の資金流入は非常に限定的である。また、昨今は大規模な自然災害が多発していることもあり、保険金の支払いもここ数年膨らんでおり、保有資金自体は横ばいないし微減、新規の投資は限定的となっている状況。
・将来、金利が正常化してきた際の影響としては、金利が上昇すれば長期の保険商品の開発・販売が再び増加してくることが考えられるため、資金流入が見込まれると考えている。この場合、日本国債をはじめとした円建て債券への新規購入ニーズも回復してくるのではないかと考えている。

・イールドカーブ・コントロールにより、10年債未満のゾーンがマイナス利回りで、超長期ゾーンがプラス利回りであることから、当社では、基本的に国債の投資については超長期ゾーンを中心としている。
・当社の運用の7割程度が国の代行部分となっており、GPIFのアセット・アロケーションに沿った運用を行うことになるところ、先日、GPIFが国内債券のウェイトを引き下げ、外国債券のウェイトを引き上げたこともあり、足元では10年債以下のゾーンは売却先行という状況。現状のイールドカーブの形状からは、20年債、30年債の超長期ゾーンにバリューがあり、再投資や、金利が上昇した年限については、多少の新規投資もあり得る。
・今後のインフレリスクを踏まえた運用について、基本的にはポートフォリオのデュレーションを短めにコントロールしていることに加え、日本国債のみならずクレジットや外債に分散投資しているため、仮にインフレになったとしても、現在の運用方針とあまり変わらない運用方針となるのではないか。
・近年では、年金受給者・加入者が高齢化する中、年金給付がかなり多い状況であり、現状では、毎年数千億円のキャッシュアウトとなっている。現状では株価が大きく上昇しているため、その上昇分で年金給付の多くの部分を賄える状況にはなっているものの、新規投資は中々できない状況。

・グローバルに国債発行増額と資産買入を含む金融緩和政策が行われる中、程度の差はあるものの、総じてイールドカーブはスティープ化しているため、仮にボラティリティが落ち着いている状況が続くのであれば、比較的長いゾーンを含めて債券投資を行いやすい状況である。このため、20年債などの超長期ゾーンの投資機会は従来より増えている。もっとも、足元では、コロナの再拡大と、一方でワクチン開発というゲームチェンジャーになり得る話の2点が浮上しているため、年末や年明け以降、イールドカーブがもう一段スティープ化する可能性を念頭に置きながら運用せざるを得ないと考えている。このため、既に一定の金利リスクを取っていることもあり、追加的に金利リスクを取ることにはやや消極的である。
・金融政策が正常化した場合の運用への影響については、結局、その時のグローバルな投資環境が具体的にどうなっているか次第、ということになる。日本が正常化している環境であれば、当然、米国等も正常化しているということだと思われるため、その環境の中でイールドカーブの形状を含めて相対的に評価した上で判断することになろう。その観点では、米国のインフレの状況が運用を変える上での論点になってくる。
・新型コロナウイルスの影響で負債のデュレーションが大きく変化しているということはない。

・海外金利が下がり、パフォーマンスが相対的に上がってきたことで、外債から日本国債へ逆流するような動きが少し見えている。日本国債の中ではパッシブファンドから利回りの高いアクティブファンドへのシフトが見られる。リテールでは、定期預金の金利がかなり低いことから、預金代替商品の中でもイールドハントの動き、具体的には、一般的に投資適格債まで組み込むようなファンドが多いところ、最近では一部ハイイールド債まで組み込む動きが拡がっている。
・将来の金利上昇局面においては、預金代替商品の中身として、為替リスクを負わない日本国債で一定程度の利回りが取れることになるため、人気が集中することは容易に想像できる。このため、足元の顧客のニーズの強さを見ている限りでは、そうした需要で一定程度は日本国債が吸収される余地があるのではないかと感じる。
・ファンドのリバランス(割高なゾーンを売って割安なゾーンを買うオペレーション)を毎週のように一定の規模で行っているが、日本国債の流動性については、コロナ前に近いところまで戻ってきている印象がある。もっとも、証券会社の事務面での体制は依然脆弱さが残っているように見える部分もあり、ショックがあればすぐに流動性が低下するリスクはあると思われるため、今後も引き続き注意して見ていく必要がある。
・残存20年や残存30年の債券を一部組み込んでいるファンドもあるが、やはり預金代替商品においては、年限をマッチさせるニーズやすぐに引き出したいというニーズもあるので、基本的にはデュレーションが長い国債と言うよりは短期でイールドが乗っている商品で運用することになる。

・春先は新型コロナ感染症の実態が把握できず、不確実な状況だったため、イールドカーブ・コントロールもある中、短期的な対応としてT-Billを利用することは理にかなっていた。もっとも、医学的な研究も進み、徐々に感染しやすい状況等が明らかになり、またワクチンも開発されつつあることから、中長期的には財政健全化にも配慮しているというメッセージをマーケットとの対話の中でしっかりと発信していくことが、今後、重要になってくるのではないか。
・イールドカーブ・コントロールがある中、10年以下の国債で資金調達を続けることは、調達コストを下げるという面ではメリットがあると思うが、金利・債券価格という形で市場との十分な対話ができなくなる惧れもあるため、バランスのとれた年限構成にし、市場の予見可能性を確保しつつ、市場が警鐘を鳴らしている時にそれをキャッチできるような仕組みを少し残しておくことが、中長期的な財政健全化を考える上では重要ではないか。
・現在の物価連動債市場は下火であるが、今後、仮に需要が高まる可能性があるのであれば、そうなる前に、課税のあり方について検討してほしい。すなわち、英米と異なり、日本では物価連動債を買った人に課税を通じてインフレリスクの一部が再導入されてしまう可能性が否定できない。他の金融資産との間の中立性や、BEIの指標性、投資家需要の喚起、予算と課税の整合性といった論点を踏まえつつ、理財局と主税局の間で潜在的課題について予め検討をしておく必要があるのではないか。

・半年前は、新型コロナ感染症がどのように伝播し、収束するかが全く見通せない中、大規模な対策に備える形で国債の大増額になった。また、企業金融への悪影響を避ける必要性もあったことから、T-Billに大きく依存することになった。その後も中々外出できない中、巨額の特別定額給付金などの大規模な対策資金が貯蓄に回っているが、これからは貯蓄が取り崩され支出されてゆくと思われる。
・T-Billについては、予見可能かつ定期的な2-40年の国債の発行を前提に本年度は大増発されたが、これから先は、T-Billの借換えがどんどん連鎖することになる。このため、新規国債の抑制と2-40年の国債での借換債を増やすことを通じて、T-Billの整理がこれから進んでいくことを期待したい。参考資料の18ページにある、中長期的な投資家需要を踏まえて、定期的かつ安定的な発行を行うことによって、国債の安定消化が進むと考えている。
・半年前から今日までのイールドカーブの変化をみると、米国でも、この間、10年債利回りが0.5%から0.9%に上昇している。海外、特に米国の影響は日本のイールドカーブでも無視できないため、こうした点や貯蓄減少など中長期的な問題も十分意識しながら、国債発行計画を作っていく必要がある。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700