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第23回ASEAN+3(日中韓)財務大臣・中央銀行総裁会議共同声明(2020年9月18日 バーチャル形式)

ローマ数字1. 序

  1. 我々は、第23回ASEAN、中国、日本、韓国(ASEAN+3)財務大臣・中央銀行総裁会議を、ベトナムのディン・ティエン・ズン財務大臣、レ・ミン・フン国家銀行総裁、日本の麻生太郎副総理兼財務大臣、及び黒田東彦日本銀行総裁の共同議長の下、開催した。本会議は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによる例外的な状況に鑑み、バーチャル形式で実施された。本会議には、アジア開発銀行(ADB)総裁、ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)所長、ASEAN事務総長、国際通貨基金(IMF)アジア太平洋地域事務所長も参加した。

  2. 我々は現下の世界・地域経済の動向や見通し、及び新型コロナウイルスのパンデミックにおけるリスクや課題への政策対応について意見を交換した。我々は、地域金融協力について、前回2019年5月のフィジー・ナンディでの我々の会議以降の進捗をレビューした。我々はまた、ASEAN+3財務プロセスにおけるこれまでの進捗が、負のショックに対する地域の経済・金融の強靭性の構築に大きく貢献したことを認識した。我々の地域が新型コロナウイルスのパンデミックによる新たな困難に直面している中、地域金融協力の重要性は更に強調されている。こうした中、我々は、チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)、AMRO、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)、及びASEAN+3財務プロセスの戦略的方向性を含め、地域経済・金融の安定を更に強化するため、引き続き協働していくことに合意した。

 

ローマ数字2. 最近の地域経済・金融情勢

  1. 新型コロナウイルスのパンデミックは、世界的に多数の犠牲者を出し、我々の経済に影響を及ぼした。我々は、ウイルスの伝染を封じ込めるための必要な措置を講じたが、これは不可避的に経済活動に影響を及ぼした。世界経済の連結性が一層高まる中、パンデミックによる、グローバル・サプライチェーンの混乱や多くの産業が直面する困難は、ショックに対する我々の経済の強靭性を確保することの重要性を示した。我々は、的を絞った家計・企業向けの財政、金融、信用支援、及び金融システム向けの調和のとれた規制猶予や流動性支援といった形の例外的措置を取ることにより、パンデミックの影響を緩和するため迅速に対処した。

  2. パンデミックを抑制する努力は、それぞれのパンデミックの状況に応じて、我々が徐々に経済活動の制限を解除することを可能にした。我々の多くにとって本年の経済成長は急激な落込みが見込まれるが、我々は、我々の経済が今後回復すると期待している。本年の見通しは不透明であるものの、我々は域内経済の回復の兆しを歓迎する。他方で、新型コロナウイルスのパンデミックの不確実な軌道に鑑み、継続する下方リスクの兆しを注視し続ける。

  3. 我々は、これらのリスクに対する脆弱性を抑制する手段を取りつつ、域内経済の持続的な回復を支えるため、すべての利用可能な政策手段を引き続き用いることを決意している。我々は、クリフ効果を防ぎ、ASEAN+3地域の成長や金融の安定を確保するため、メンバーの経済やパンデミックの状況に沿って、パンデミックに対応する措置からの出口の適切なタイミングを慎重に見極めていく。我々は、開かれた、ルールに基づく多角的な貿易・投資体制への支持と、地域の統合と協力の強化へのコミットメントを引き続き堅持する。

 

ローマ数字3. 地域金融協力の強化

【チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)】

  1. 2010年に最初のCMIM契約書が発効して本年10周年を迎える中、我々は、ASEAN+3地域における信頼できる自助メカニズムとしてCMIMを更新し、また、CMIMをグローバル金融セーフティーネットにおける重要な構成要素として確立することにおける、メンバーのたゆまぬ努力に感謝する。こうした観点から、我々は、CMIMの妥当性と即時性の更なる向上に資する、本会議で合意した歴史的な成果を歓迎する。

  2. 我々は、2019年12月に中国・厦門においてパッケージ合意を妥結した代理の努力を称賛する。これは、メンバーにとってのCMIMの価値を向上させ、CMIMの即時性を向上させる画期的な成果である。このパッケージ合意において、メンバーは、①IMFデリンク割合の30%から40%への引き上げ、②要請国・供与国双方の自発性及び需要に応じたCMIMに対する現地通貨による支援の制度化、③CMIMの円滑な実施を可能にするIMFデリンク部分に関するCMIMコンディショナリティ・フレームワークの明確化、に合意した。うち最初の2つは、本年のCMIM契約書の臨時見直しの中に含まれた。

  3. 我々は、最初の定期見直しに基づく、2020年6月23日に発効した、CMIM契約書及びCMIM運用ガイドラインの改訂を歓迎する。我々はまた、CMIM契約書の臨時見直しの適時の完了を歓迎するとともに、CMIM契約書を改訂するための合意書を承認する。我々は、遅くともLIBOR改革の完了が見込まれる2021年までに合意書への署名・発効を目指すとともに、代理に対して契約書の改訂内容を反映するためのCMIM運用ガイドラインの改訂を指示する。

  4. 我々は、代理による技術的指針の承認を受けて、CMIMコンディショナリティ・フレームワークが完成したことを歓迎する。この技術的指針は、IMFデリンク部分に関し、CMIMメンバーが、AMROのサポートも得つつコンディショナリティを策定する際の方針を示す。IMFリンク部分に関する技術的指針は、CMIM要請国の過度な負担を避けるため、危機時におけるAMROとIMFの円滑かつ迅速な協力・協働の作業メカニズムを明確化しつつ、AMROのサポートも得てのCMIMにおける独立した意思決定のプロセスを確保する。

  5. 我々は、昨年、実際の送金を伴う第10回テストランが成功裡に完了したことを歓迎する。我々は、本年予定されている11回目のテストランが様々な運用上のリスクの理解を高め、メンバー間で共通認識を深めることに資すると確信している。我々は、今後、代理に引き続きCMIMの即時性を向上させていくことを指示するとともに、AMROがメンバー間の議論に貴重な洞察やインプットを提供することを要請する。


【ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)】

  1. 新型コロナウイルスのパンデミックに直面する中、我々は、ASEAN+3メンバーを支援する「信頼のおける家庭医(trusted family doctor)」としての、より強力で優れたAMROへの継続的なニーズを認識する。我々は、政策立案における有益な参考資料となる、パンデミックの域内への影響に関するAMROの適時の分析やアップデートを称賛する。我々は、AMROによる、域内のマクロ経済や金融の安定の確保のためのメンバーへの継続的な支援を期待する。

  2. こうした観点から、我々は、代理によって承認された新たな「中期実施計画(MTIP):2020-2024」を歓迎する。我々は、AMROが地域へのフォーカスや比較優位を更に発揮することを慫慂しつつ、新たな中期実施計画を執行することを支援する。我々は、メンバーへの支援を強化するため、AMROが新型コロナウイルスの影響を考慮しつつ、業務計画を調整し、サーベイランス能力の強化を継続することを期待する。我々は、成果に基づく機関として確立するために統合評価サイクルを導入するAMROの努力を評価するとともに、その実施を期待する。

  3. 我々は、マクロ経済サーベイランス能力の向上、特に「経済レビュー及び政策対話(ERPD)」マトリックス・フレームワークや定期サーベイランス業務における同フレームワークの活用における、AMROによる過去数年の著しい進展を歓迎する。我々はまた、CMIM危機予防ラインへアクセスするための適格性の参考資料としてERPDマトリックス・スコアカードを活用することを歓迎する。こうした観点から、我々は、サーベイランス過程のガバナンス、及びCMIMプログラムへの支援を向上するため、パイロットベースで政策・レビュー機能が導入されることに期待する。我々は、AMROが域内でのプレゼンスや専門性を効果的に発揮し、資本フロー管理政策やマクロプルーデンス政策を含む主要政策イシューについて組織としての見解を構築するとともに、地域を代表して様々な場でこれらの見解を発信することを期待する。

  4. 我々は、CMIMの即応性向上へのAMROの貢献を評価する。我々は、メンバーの能力構築のための技術支援(TA)の供与に関しAMROを称賛するとともに、技術支援の範囲を更に拡大するAMROの努力を歓迎する。我々は、AMROが組織のガバナンスを強化し、組織運営における財務の健全性と持続性を確保することを求める。我々は、AMROが知名度を上げてきたことを認識するとともに、AMROが更に認知度を向上させ、引き続き積極的に関連機関との連携を構築することを慫慂する。

  5. 我々は、AMROの発展を進める上での強いリーダーシップに関して、土井俊範所長率いるAMROのシニアマネジメントチームを称賛する。新たなシニアマネジメントチームは、この激動の時期においてASEAN+3メンバーをよりよく支援するため、迅速に動き、効果的に業務を適合させてきた。我々は、AMROが引き続きそのように対応することを慫慂するとともに、AMROの任務を遂行する能力に対する信頼を表明する。


【アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)】

  1. 我々は、「ABMI中期ロードマップ2019-2022」に沿って、ABMIが継続的に進展していることを認識する。ABMIは、通貨と期間のミスマッチの軽減や、域内の貯蓄の長期投資への動員に資する現地通貨建て債券市場の育成を継続していく。

  2. 我々は、インフラ投資パートナーシップ(IIP)の調査を含む、インフラファイナンスを支援するための信用保証・投資ファシリティ(CGIF)による継続的な努力を称賛する。我々は、域内のインフラファイナンスや現地通貨建て債券市場の育成を更に促進する革新的な方法を検討するため、CGIFが同調査の結果を活用することを慫慂する。我々は、域内のインフラ需要を満たすために現地通貨建てグリーンボンドを促進する新規の技術支援プロジェクトの開始、及びアジアンボンドオンライン(ABO)の有用性向上を目的とした新規の技術支援プロジェクトの開始を歓迎する。我々は、ASEAN+3債券市場フォーラム(ABMF)の下での市場統合に向けた着実な進捗を認識する。我々は、クロスボーダー決済インフラ・フォーラム(CSIF)による「ASEAN+3証券集中振替機関と即時資金決済システムの統合のための次のステップ」の公表に留意するとともに、域内のクロスボーダー担保の利用を促進するためのCSIFとアジアプライム担保フォーラム(APCF)の協働の努力を称賛する。我々は、技術支援調整チーム(TACT)による受益国への継続的な能力強化支援に期待する。


【災害リスク金融・保険におけるASEAN+3金融協力】

  1. 我々は、ASEAN事務局と世界銀行の協力の下、ASEAN諸国の気候・災害リスクに対する財政強靭性を向上させる東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)の取組への支援を継続する。我々は、ラオス及びミャンマー向けの災害リスク保険プールの開始に向けた作業の進展、及び、他のASEAN諸国に拡大するための公共財産保護プログラムに関する作業部会の設立を歓迎する。我々は、他のASEAN+3国がSEADRIFに参加することを歓迎するとともに、ASEAN+3域外のドナーパートナーが本取組を支援することを慫慂する。


【ASEAN+3財務プロセスの戦略的方向性】

  1. 我々は、より強靭で包摂的で統合された地域とすべく、ASEAN+3金融協力を更に深化・拡大するための基礎となる「ASEAN+3財務プロセスの戦略的方向性」及び「ASEAN+3財務プロセスの実効性や効率性の向上に関する提言」の下での進捗の継続を歓迎する。

  2. この観点から、我々は、新たなイニシアティブのための潜在的分野を検討する5つのスタディ・グループ(SG)の設立を歓迎し、本会議のために提出された「ASEAN+3の現地通貨の活用促進(SG1)」、「インフラファイナンス(SG2)」、「マクロ・クリティカルな構造問題のための手法(SG3)」、「気候・災害リスクに対する財政強靭性の強化(SG4)」、「リスクを最小限にしつつ、テクノロジー進化の便益を活用する政策協調の向上(SG5)」の各々の報告書に示された進捗に留意する。我々は、金融協力を促進する新たなイニシアティブを探求するため、報告書を踏まえた更なる議論に期待する。

  3. 我々は、メンバー間での活発かつ適時な意見交換を慫慂する、ERPDセッションにおけるテーマ別の議論の導入を歓迎する。我々は、ASEAN+3財務プロセスの実効性や効率性の向上のための更なる努力を期待する。このため、我々は、メンバーによるASEAN+3のオンライン・リポジトリの開発・管理への支援を含め、AMROがASEAN+3財務プロセスへの支援を更に強化することを慫慂する。

 

ローマ数字4. 結語

  1. 我々は、とりわけ困難な状況の中、2020年のASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁プロセスの共同議長として優れた準備を行った、ベトナム、日本政府に謝意を表明する。我々は、2021年にジョージア・トビリシにおいて次回会議を開催することを期待する。ブルネイ及び韓国が2021年のASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議の共同議長となる。