地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。
"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
1698年の今日、イギリスの発明家トマス・セイヴァリ(Thomas Savery、1650年ごろ-1715)が蒸気機関の特許を取得しました。
蒸気機関の発展に関わった人物といえばニューコメンやワット(James Watt、1736-1819)などが思い浮かびますが、セイヴァリは彼らの先輩にあたる人物です。
トマス・セイヴァリの肖像 Photo by Getty Images
イングランド南西部の地主貴族の一家に生まれたセイヴァリは、領地の近くにある鉱山の労働効率を上げたいと悩んでいました。当時の鉱山では排水が大きな課題となっており、鉱夫たちは命の危険にさらされていました。
数多くの実験を繰り返し、セイヴァリは「火の機関(Fire Engine)」と名づけた機械を開発しました。これは容器の中の水を蒸気の力で押し出し、蒸気の凝縮を利用して生まれた真空によって新たに水を吸い上げるというものです。彼は国王・ウィリアム3世の前で実験に成功し、速やかに特許を取得することができました。
しかし、「火の機関」は簡単な原理を利用しているがゆえに少しのずれで破裂事故を起こしてしまったため、短期間でニューコメンの改良型蒸気機関に取って代わられました。ところがセイヴァリの特許の名目は「火力によって揚水する装置」と大ざっぱで、ニューコメンの装置も彼の技術の利用とみなされたため、セイヴァリは莫大な特許料を手にしました。転んでもただでは起きなかったのです。
セイヴァリの「火の機関」の模式図。破裂事故が多かった。 Photo by Getty Images