新型コロナウイルスに感染しないように、手洗いやアルコール消毒などの対策が重要なのはよく知られています。
それだけでなく、最近は「充分に睡眠を取って免疫力を高める」「よく眠り、バランスよく食べる」ことも推奨されてるようになりました。これらに共通するのは「正常な体内時計で生活リズムを維持すること」です。
そこで今回、「時間健康学」「時間栄養学」を専門とする柴田重信氏(早稲田大学教授)がブルーバックスWebに緊急寄稿。ウイルス感染と体内時計の関係について考察し、感染しやすい時刻を避け、規則正しい生活リズムを維持することの重要性について語っていただきました。
外出自粛の時期こそ規則正しい生活が重要な理由
コロナウイルスとよく似たインフルエンザをマウスに感染させたとき、感染させる時刻で死亡率などが異なることが、2019年に報告されました(Nature communications10,4107)。
インフルエンザウイルスを鼻から入れ、15日目の死亡率を見るという実験で、ウイルスを入れる時間が、夜遅い時間帯(マウスが寝る前)と早朝(マウスが起きる直前)とを比較したところ、夜群の21%に比較して早朝群が71%と非常に高いことがわかりました。また、体重低下も朝群の方が著しいことがわかりました。
次に、体内時計の関与を調べるために、時計遺伝子が働かなくなったマウスで調べました。その結果、死亡率は早朝では相変わらず75%でしたが、夜群でも84%に増加しました。
したがって、自宅待機で体内時計が狂ったような生活をしていると、インフルエンザウイルスやコロナウイルスに感染しやすくなる可能性を意味しています。
また、早朝群は夜群に比較して、「肺の組織で、炎症促進物質が増え、炎症抑制に関係する物質が減り、炎症が強く出る」というデータを得ています。
したがって、早朝に感染すると肺機能が強く抑制されることになります。
時差出勤は体内時計のしくみから見ても正しい⁉
以上のことから、高齢者には超朝型の人がいますが、そのような人は、よりウイルス感染に注意する必要があると思います。
また、満員電車では夜の帰宅時の通勤よりも朝の出勤時の通勤により注意を払うほうがいいかもしれません。
血液中にあるリンパ球の1つに、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)というリンパ球があります。自然免疫の最前線で、文字通り殺し屋として機能するリンパ球で、がん細胞やウイルスに感染細胞を見つけると攻撃します。
NK細胞中には、パーフォリンという標的細胞に穴をあけるタンパク質や、グランザイムという標的細胞を誘導し細胞死を起こさせるタンパク質が含まれています。この細胞殺傷性にも日内リズムが見られ、マウスの実験では活動期の終わりから睡眠に入る時が高くなっています。