前日の海外市場では、米・7月フィラデルフィア連銀景況指数が市場予想5.0に対して21.8と大幅に改善したことから、ドル買いが強まり、ドル円は一時108.013円まで上値を拡大しました。ただ、ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁が「積極的に予防的なアプローチをとるほうが良い」と述べ、クラリダ・FRB副議長が「不確実性は増しており、早期に動く必要がある」と発言すると、25bpの利下げがコンセンサスになっていたFOMCでの利下げ予想が、一気に50bpの可能性を示唆したことから、ドル円は反落しました。また、「米軍が中東ホルムズ海峡でイラン無人機を撃墜した」とのヘッドラインもドル売りを後押しすることになり、ドル円は高値圏から107.215円まで下落する動きを見せました。

50bpの利下げ幅予想は20-30%程度ではあったものの、昨日の動きの中で一気に65.5%まで上昇したことで、急速に次回のFOMCへの不透明感が強まりました。パウエルFRB議長の議会証言などを経て、ほぼ25bpの利下げで落ち着くだろうとの見方が強かったこともあり、50bpの利下げの織り込み度がここまで急速に高まったことは、まさにネガティブサプライズであったと考えられます。また、イランと米国の軍事衝突の可能性が高まってきたこともネガティブサプライズだと考えられるため、ドル円は108円台では上値が重くなると考えるのが妥当でしょう。

エマージング通貨に目を移すと、南ア中銀政策金利発表では市場の予想通り6.50%に25bp利下げとなりましたが、クガニャゴSARB総裁が会見で「政策の決定は全会一致」「0.50%の利下げについて議論しなかった」などと述べたことにより、追加利下げの可能性が後退したことでランド買いで反応しました。また、トランプ大統領が「現時点では対トルコ経済制裁はないだろう」との見解を示すと、米国からの制裁から解放された安堵感によりリラ買いが強まり、トルコリラ円では19円台を回復する動きを見せています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

ドル売り材料が目白押しとなったため、ユーロドルについては1.12ドルを下抜けることなく反発しましたが、「欧州中央銀行(ECB)は物価目標の修正を検討」との報道はユーロ上値を抑えるには十分な内容だったと考えられます。ドラギECB総裁は、上下均斉的なアプローチが好ましいと考えている可能性が高く、インフレ率が目標である2.0%を一貫して下回っている状況に直面しているFRBの経験を念頭に置いているのではないかとも指摘されています。

ロイターが、100名のエコノミストに対してECBの金融政策に関するアンケート調査を行ったところ、2/3のエコノミストが25日でのフォワードガイダンス変更を支持し、40%が年内のQE(量的緩和)を再開すると予想しています。個人的な見方としては、引き続き、7月にECBがフォワードガイダンスを変更、9月に超過準備の階層化を導入せずに10bpの利下げを行うとの見方に変更はありません。

日米通商協議に関しては、参議院選挙後の8月に再開されて9月の日米首脳会談での一部合意の可能性が報じられています。ただ、「8月-9月に合意を公表する」という内容は、既に日米間で合意はなされており、その公表時期を日本の参議院選挙に影響しないよう、選挙後の8月にずらすという意味だと考える方が自然です。参院選後は、徐々に日米通商協議に関する話題が出てくるのではないでしょうか。

ユーロドルの短期調整は終了、次は戻り売りが機能しそうだ

欧州時間に一時的にユーロ売りになる場面もありましたが、1.1210ドルでのユーロドルロングについては、1.1250ドルにて利食い、手仕舞です。引き続き、1.1280ドル付近では上値の重さが確認できることもあり、1.1280ドル付近まで引き付けての戻り売り戦略とします。利食いは1.1210ドル付近を想定し、損切りは1.1320ドル上抜けに設定します。

海外時間からの流れ

英下院は、次期首相が合意なきEU離脱の強行突破を阻止するための法案を可決しました。この議案は19日に上院に諮られることになっており、可決されれば、英議会は離脱期限の10月31日までの期間は開会されることになります。ジョンソン前外相は、議会を休会させてでも10月末に離脱すると言明しており、この発言への牽制だと考えられます。

今日の予定

本日は、独・6月生産者物価指数、加・5月小売売上高、米・7月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ブラード・セントルイス連銀総裁、ローゼングレン・ボストン連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。