未来予測から勉強、伝え方まで……あらゆる場面で応用できる「Sカーブ」

Sカーブ,斎藤広達
(画像=THE21オンライン)

「Sカーブ」をご存知だろうか。最初はゆっくりと、その後急激に数字が伸び、ゆるやかに収束していく……。このSカーブの発想は、実はビジネスのあらゆるシーンに応用できると説くのは、新著『数字で話せ』にて数字を使った効果的な説得方法を説く経営コンサルタントの斎藤広達氏。氏によれば「社長がいつも同じ話ばかりして社員に退屈がられるのも、Sカーブで説明がつく」というが、果たしてその理由とは?

「初速がヤバい!」そんなとき、どうする?

開発期間は実に5年。会社の期待を一身に背負った商品がいよいよ発売。

……そして1カ月後、営業会議に集まった人たちの顔には悲壮感が漂っています。

「目標は半年で60万ケースなのですが、最初の1カ月で5万ケース。これだと半年でも30万ケースにとどまる計算になってしまいます……」

商品は初速が大事、と言いますが、その初速が悪いと誰もが陰鬱になるもの。あげく「そもそも商品コンセプトが悪かったんだ」「営業の展開が弱すぎる」「広告を打たないからこうなるのだ」など、責任のなすりつけ合いが行われます。

では、初速が良いか悪いか。それはどのように判断すればいいのでしょうか。このケースでは、「目標数値÷期間」で目標数字を決めていたようです。

このような場合、ぜひ知っておいてもらいたいのが「Sカーブ」です。

Sカーブっていったい何?

Sカーブとは図のような曲線を指します。

Sカーブ,斎藤広達
(画像=THE21オンライン)

最初はほとんど動きがなく、時間が経過するとともに、ある段階から鋭い傾きで数値が上昇し、その後穏やかに漸増していくという曲線です。この形がアルファベットのSに見えるので、「Sカーブ」と呼ばれます。

世の中の多くのものは、平均値に近ければ近くなるほど数が増え、そこから遠ざかれば遠ざかるほど少なくなります。たとえば身長なら、男性の身長の平均値である170センチ付近の人が一番多く、そこから離れれば離れるほど、数が少なくなります。

170センチからプラスマイナス5センチくらいの人はそこかしこにあふれていますが、身長150センチ以下の男性や190センチ以上の男性をほとんど見かけることがないことからも、それがわかります。

こうした分布のことを「正規分布」と呼ぶのですが、それを累積曲線にしたのが、このSカーブとなります。

身長の例だと、縦軸が人数、横軸が身長となります。平均より身長が10センチ以上低い人はそれほど多くないので、当初、カーブの傾きはゆるやかです。その後、平均値に近づくにつれて人数が増えるので、傾きは一気に急に。そして、身長が平均より10センチ以上高い人もまた数が少ないので、傾きも徐々にゆるやかになるわけです。