2019.01.16
# 飲食店

1本3000円!超高額の「ガトーショコラ」が飛ぶように売れる理由

常識をくつがえす「価格戦略」
倒産危機にあったレストランが、1つ3000円のガトーショコラだけで年商3億円の有名店に成長……。そんな大逆転ホームランを放った張本人が、「ケンズカフェ東京」のオーナーシェフで、著書『余計なことはやめなさい!』を刊行したばかりの氏家健治氏だ。決して安くはないガトーショコラが、なぜ飛ぶように売れるのか? そこには常識をくつがえす「価格戦略」があった。氏家氏がその舞台裏を明らかにする。

価格を「4倍」に上げた理由

私は過去3回にわたってプライスにメスを入れ、値上げを断行しました。しかも短い期間内にです。最終的に内容量は当初の半分になり、価格は実質4倍以上になりました。客観的に見れば、とんでもない値上げでしょう。

Photo by iStock

しかし、結果として値上げには大きい利点がありました。まずは、じゅうぶんな利益が確保できるようになったことで、材料やパッケージを3000円(消費税込み)という価格にふさわしいものにアップグレードできました。この後で詳しく述べますが、バターが不足するといった不測の事態を乗り切れたのは3000円に値上げしていたからです。

誤解を恐れずに言えば、お客様の格が上がったことも値上げによる大きなメリットです。明らかにいらっしゃるお客様の層が変わりました。

通販をやめてからはクレームもありません。考えてみれば、1本3000円のガトーショコラを「うっかり」買うケースはほとんどありません。みなさん、高いことを最初から承知の上で、高いからこそ上質な味であろうと期待して注文してくださいます。

高値を承知で買うというのは、つまり真剣だということ。どうしても食べたい、こういう機会に贈りたい、この人にプレゼントしたい。そんな真摯な気持ち、明確な目的で購入されているのです。

みなさんの会社やお店の商品、サービスは本当に適正な値段をつけていますか?

もしかしたら、「業界ではこれぐらいが水準だから」という感覚で価格を設定したり、得意先の意向などを忖度して安値を付けてしまってはいないでしょうか。

価格は単なる数字ではありません。商品に対する作り手の自信の表れです。その自信がないからついつい安価な設定に走ってしまうのです。

 

安さは善、安さこそ集客力の源。そうした発想は私にはまったくの「余計なこと」。

世の中には値下げ圧力が蔓延していますが、下手にその動きに乗ってしまうと後戻りができません。

値下げ路線は本質を揺るがせ、体力を削がれる消耗戦の始まり。資本力がある企業や店であれば値下げをして思い切ってシェアを取るという戦略も可能ですが、中小企業や小さな店には望むべくもありません。

私の業界には、高いクオリティを備えながら商品を安く売りすぎている店がたくさんあります。洋菓子も和菓子もパンもとあらゆる方向に手を広げ、何屋なのかわからない、何がウリなのかがわからない、そしてどれも商品が格安、という店は枚挙にいとまがありません。

やたらと広いラインナップ、無意味に安い価格設定。みなさん、心当たりはありませんか。

日本人は価格を上げることに強い抵抗感を持っています。値上げをしたら暴利を貪っているなどと言われるのではないか、お客様が離れるのではないか。だったら、安い価格のままで利益を犠牲にしたほうがまし。そんなふうに考える傾向があるように思います。

しかし、それは大いなる間違いです。あなたの商品には、あなたが長年培ってきたノウハウや信用がすべて詰まっています。原材料費に業界水準のマージンを上乗せしただけの価格でいいはずがありません。

安値を付けるということは、自分や自社の価値を落とすこと。プライスは価値の集積です。自信を持って、堂々と商品にふさわしい高値を付けてください。

SPONSORED