シンカー:単純にエネルギーを除くと物価上昇圧力がみられないと考えてはいけないだろう。宿泊料のテクニカルな上昇寄与がなくなっても、コアコア消費者物価指数に変化がなかったのは、その他の物価上昇圧力がオフセットしたことを意味するからだ。マクロの物価上昇圧力が着実に強くなっているのは、絶対物価の動きである。ミクロの個別品目ごとの相対物価の動きの重要性は低下するはずだ。携帯電話料金などのテクニカルな大幅な引き下げは、瞬間的に消費者物価指数を押し下げるが、家計の実質所得の増加となり、他の需要も増加し、絶対物価の基調への影響は小さくなるからだ。ミクロの個別品目の特殊要因に目を奪われて、転換点にあるとみられるマクロの絶対物価の動きを見失わないようにしたい。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

9月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+1.0%と、8月の同+0.9%から上昇幅が拡大した。

2ヶ月連続の上昇幅の拡大で、1%台となるのは2月以来となり、物価の持ち直しが確認できる。

一方、8月のコアコア消費者物価指数(除くエネルギーと生鮮食品)は前年同月比+0.4%と、7月から変化はなかった。

2月の同+0.2%から持ち直しの傾向にあるが、エネルギー価格の上昇の寄与の大きいコアと比較して弱い。

単純に、エネルギーを除くと物価上昇圧力がみられないと考えてはいけないだろう。

8月にコア消費者物価指数が7月の同+0.8%から上昇幅が拡大したのは、宿泊料が+10.2%と大幅に上昇したことが主な理由であった。

調査期間とお盆休暇が重なったとみられ、宿泊料が通常の価格より引き上げられていたことが、テクニカルに統計を押し上げた可能性があった。

一方、9月は宿泊料は同+0.8%と、下落に転じるとみられる。

この変化だけで、コア消費者物価を0.15%程度も押し下げる力があった。

しかし、コアコア消費者物価指数に変化がなかったのは、その他の物価上昇圧力がオフセットしたことを意味する。

失業率が低下をすると、賃金の上昇が強くなり、物価の上昇も強くなっていくというフィリップス曲線の関係がある。

過去のデータでは、2%台に定着するとようやく失業率の低下が物価の上昇率の拡大につながり、2.5%から2%への低下で加速感が確認できる。

失業率がようやく2%台に定着したことにより、物価上昇圧力も着実に強くなってきていると判断すべきだろう。

マクロの物価上昇圧力が着実に強くなっているのは、絶対物価の動きである。

ミクロの個別品目ごとの相対物価の動きの重要性は低下するはずだ。

携帯電話料金などのテクニカルな大幅な引き下げは、瞬間的に消費者物価指数を押し下げるが、家計の実質所得の増加となり、他の需要も増加し、絶対物価の基調への影響は小さくなるからだ。

ミクロの個別品目の特殊要因に目を奪われて、転換点にあるとみられるマクロの絶対物価の動きを見失わないようにしたい。

2019年の物価上昇率の基調は前年同月比は1%を超えて上昇していくことになるだろう。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司