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スポーツ選手のすごい賞金、「税金」や「手取り」はいくら? 大坂なおみ選手を例に解説します。

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スポーツ選手のすごい賞金、「税金」や「手取り」はいくら? 大坂なおみ選手を例に解説します。

今月9日(日本時間)、全米テニスの女子シングルス決勝で日本の大坂なおみ選手が優勝し、賞金380万ドル(日本円で約4億2,180万円)を獲得しました。

テニスの大阪なおみ選手

≪画像元:Wikipedia

日本人がスポーツの大会を制して巨額の賞金を獲得する例はこれまでにも何度かあります。

気になるのが税金です。

選手たちはいったいいくらの税金を払うことになるのでしょうか。

今回は、大坂選手を例に考えてみます。

日本の税金が課税されるのは原則として「居住者」

日本の税金が課税されるのは原則として「居住者」

まず、ここで押さえておきたいのが、その選手の生活の拠点がどこであるかです。

日本の所得税法では、「日本国内に住所がある」あるいは「現在まで引き続き1年以上居所がある」個人(以下、「居住者」といいます)に対して課税することとなっています。

居住者は、ちょっと細かいのですが、次の2パターンに分かれます。

1.非永住者以外の居住者

一般的な日本人はここに該当します。

非永住者以外の居住者は「どこで稼いだか」に関係なく、所得のすべてに課税されます。

スポーツ選手の場合なら、日本国内の試合で稼いだ賞金だけでなく、海外で稼いだ賞金にも課税されるのです。

2.非永住者

非永住者とは、居住者のうち、次の要件の両方を満たしている個人を言います。

(1) 日本国籍がないこと。

(2) 過去10年以内の間に、日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下であること。

非永住者に該当すると、原則として日本国内で得た所得はもちろんのこと、海外で発生した所得だけど日本国内で支払いを受けたもの、あるいは海外で発生した所得だけど日本国内に送金されたものに課税されます。

なお、居住者に該当しない場合は「非居住者」となります。

一時的に日本に来ている人」をイメージするとよいでしょう。

非居住者については、日本国内で発生した所得についてのみ課税されます。

たとえば、海外在住の選手で日本の試合で賞金を獲得した場合、その賞金について日本の所得税を納めなくてはなりません。

なお、大坂選手については、3歳まで日本に住んでいたようですが、その後は海外で暮らしていたようです。

日本に生活の拠点がなく、かつ賞金を獲得したのがアメリカなら、日本の所得税は課されないこととなります。

逆に日本に生活の拠点があり、上記居住者要件を満たすならば、国内外関係なく稼いだ所得についてはすべて所得税の課税対象です。

「その賞金はどういう立場で獲得したか」で課税の仕方が変わる

「その賞金はどういう立場で獲得したか」で課税の仕方が変わる

では、仮に大坂選手が日本在住の選手だったとしましょう。

「居住者として所得税の対象になるから問題解決」…になるわけではありません。

彼女が「どういう立場でその賞金を獲得したか」で所得の計算方法が変わるからです。

立場次第で、獲得した賞金の税法上の扱いは次のように異なります。

1.日清食品の社員だった場合

大坂選手の所属は日清食品となっています。

もし彼女が日本在住で、かつ日本の日清食品の社員であった場合、彼女の生活の糧は会社からもらうお給料つまり「給与所得」になります。

となると、賞金は棚ぼた的に他の法人からもらった「一時所得」に該当します。

したがって、4億2,180万円の賞金は次のように計算されます。

【所得金額】

仮に、優勝するための経費が3,000万円くらい だとすると、

(4億2,180万円-3,000万円)-50万円=3億9,130万円(一時所得の金額)

【所得税額】

給与所得の金額が500万円だとするならば、

〔(500万円+3億9,130万円×1/2)-38万円(※)〕×45%-479万6,000円=8,532万5,500円(所得税の金額)

(※)ここでは計算をわかりやすくするため、あえて基礎控除38万円のみ考慮しました。

つまり、賞金の約2割を所得税として納めなくてはならないことになります。

なお、一時所得は棚ぼた的な所得であることから、そこに多額の課税をするのは負荷が大きすぎるという理由で税負担が軽くなるようにされています。

ただ、大坂選手の場合、プロテニス選手であることから、日清食品の社員である可能性は低いと思われます。

一時所得として獲得賞金を計算するのは、オリンピック選手のように「単発で世界試合に参加する」ケースのほうが適しています。

2.個人事業主であった場合

もし、日清食品とは契約であり、彼女が1人の個人事業主としてプレーをし、継続的・反復的に獲得する賞金が彼女の生活の糧となっているのならば、賞金は事業所得に該当します。

1.と同じ条件かつ大坂選手が青色申告をしていた場合には、次のような計算を行います。

【所得金額】

(4億2,180万円-3,000万円)-65万円=3億9,115万円(事業所得の金額)

【所得税額】

〔3億9,115万円-38万円(※)〕×45%-479万6,000円=1億7,105万500円(所得税の金額)

(※)ここでは計算をわかりやすくするため、あえて基礎控除38万円のみ考慮しました。

個人事業主だと賞金の4割を所得税として納付しなくてはならないことになります。

一時所得よりもはるかに負担額が大きくなるのです。

事業所得や雑所得は一時所得と異なり、最初から営利を目的とする恒常的な活動であることから税制上の特段の配慮はなされていません。

なお、大坂なおみ選手が日本を拠点として活動するプロテニス選手であるなら、賞金稼ぎが彼女の事業であり、賞金は事業所得計算上の売上に該当します。

ただ、例示した金額はあくまでも所得税のみです。

実際には別途復興特別所得税、住民税、国民健康保険税や社会保険料(加入しているならば)がかかってきます。

住民税の所得割負担は10%、国民健康保険税と国民年金保険料の負担額は年額でおよそ100万円、社会保険に加入しているならその負担額は年額でおよそ150万円になります。

大坂選手の賞金4億円については、55%前後が公的負担で国や地方自治体に収められることになり、手元に残るのは2億円前後になります。

スポーツの世界は相当厳しい世界

コンスタントに4億稼げていれば問題ないかもしれませんが、スランプもあるのがスポーツの世界です。

なおかつ、プロコーチや体作りなどで経費がかかります。

スランプに陥ったら資金繰りにも困ることになるわけですから、実は相当厳しい世界であることがうかがえます。(執筆者:鈴木 まゆ子)

《鈴木 まゆ子》
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鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター 中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。朝日新聞『相続会議』、納税通信、KaikeiZineなどメディアで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著) 寄稿者にメッセージを送る

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