(本記事は、Mac安田氏の著書『儲かる!民泊経営』徳間書店、2018年2月28日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『儲かる!民泊経営』シリーズ】
(1)民泊で「ブランドなし」「知名度なし」「資本なし」でもやっていける作戦とは?
(2)「民泊が盛り上がるのはオリンピックまで」のウソ
(3)民泊で「空き部屋」をなくし満室にするコツ
(4)民泊ゲストは「楽しい体験」にお金を払う──高級料亭と大衆店どちらを選ぶか?
(5)民泊用のマンションのベストな広さは何平方メートル?

儲かる!民泊経営
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

バーゲンが大好きな人を、ゲストにしない

民泊に限らず、事業で儲けるためにはよいものを提供する必要があります。

そこまでは正しいと思いますが、では、「よいもの」とは一体何でしょう。それを突き詰めると、「財布の紐を緩める気にさせるもの」ということになります。作る側のコダワリを押しつけても、お客の財布の紐は緩みません。

民泊はスタートさせることより、継続することが難しいといえます。

ようやくお客の財布の紐を緩めさせる舞台が整ったとしても、財布の中をのぞき込んだら中身が空っぽだったら、トホホです。財布を逆さにしていくら振っても、ないものは出てきません。トホホでは済まない話になってしまいます。

膨らんだ財布を狙わなければ勝算はないと、肝に銘じてください。

当たり前すぎるアドバイスなので書いていて恥ずかしくなるほどですが、世の中の広告を見ると激安、お買い得、値引き、決算処分、セール、特価などが目立ちます。これらは、「はーい、お金のない人、集まってくださ~い!」と呼びかけているのと同じです。

民泊経営という立場から離れれば、私もそんな呼びかけに心が動くことがあります。しかし、民泊経営者としては、激安に走るような人たちを寄せつけない工夫をすべきです。

随分と偉そうなことを言いますが、民泊で儲かるか損するかのターニングポイントですから、誤解を恐れずズケズケと申し上げました。

品質が高いのに、お手頃料金の宿を目指す

これから私がお話しする「民泊で儲ける方法」は、お金を自由に使える人(お金自由人)にワクワクしてもらって、自主的に高い料金を払っていただくという、それこそウィンウィンのストーリーです。しかも大手企業と戦わずにすむ、理想的な商法です。

ここであなたは、こんな疑問を抱くのではないでしょうか。

「なぜ、大手企業と戦わずにすむのか?」

お答えしましょう。

それはズバリ、お金自由人の数が少ないからです。

大手企業は売上高とシェアを伸ばし続けないと生き残れない宿命を負っていますので、数の多い中間層をターゲットにせざるを得ません。誰にも受け入れられる、無難なホテルを作らないといけないのです。

つまり、減点法で減点されないホテルを提供することになります。

ところがそんなホテルは、お金自由人の感性を刺激するはずがありません。「どれもこれも同じようなもの。それならアクセスがよく、品質の割に安いところを選ぼう」となるのは自然の流れであり、要するにこれが値段競争なのです。

一方で、私たち個人経営の民泊は、売上高やシェアを気にする必要はありません。

ですから余裕を持って、お金自由人の感性を刺激するホテル作りに専念すればいいというわけです。

テーマは、ゲストが求める「京都風」に決定

「お金自由人の感性を刺激するホテルを作ろう!」
「さて、テーマは何にしようか?」

となると、急に勢いがなくなってしまいました。

そこで、設計事務所の若い女性スタッフの新田さんに相談すると、「まっ、そう難しく考えなくても、ご自分の好きなものをテーマにすれば?そのほうが愛着が湧くし......」とあっけらかん。「だったら俺はハワイが好きだし、ハワイ風。楽しくいこうぜ!」とカンタンに決めました。

でも一晩寝ると、それはおかしいことに気づいたんです。日本には日本らしいホテルを作らないと、海外からの旅行者がガッカリするはずです。

「日本らしいデザイン」を具体的に考えていた時、新田さんが言いました。

「先生、外国人が”妄想”する日本とは何かを知るべきです!」

考えてみればその通り。ハワイ風、ローマらしいと勝手にイメージするのは旅行者であって、現地の人ではないわけです。

「外国人が”妄想”する日本とはどんなものか?」
「外国人が日本に期待するデザインは何か?」

私はカンニング相手としてフォーシーズンズホテル京都と星のや東京(星野リゾート)に白羽の矢を立てました。

こう言っちゃなんですが、同じカンニングをするにしても誰の答えを真似るのかにはセンスが必要であり、これも実力のうち。フォーシーズンズは外国人富裕層の感性データを膨大に収集し、日本に期待するデザインを研究済みと見たわけです。

星野リゾートはもともと富裕層がターゲットであり、外国人が喜ぶ仕掛けを得意としています。

「おいおいオマエ、民泊やろ。星野リゾートと勝負する気か?気は確かか?」とのツッコミ、ありがとうございます。

ちなみに、フォーシーズンズホテル京都の宿泊料金は、ツイン1泊万円より。

10人中9人は捨て、残りの1人をターゲットに

私の親友の拓哉くんは、B級グルメ探索の達人。

彼は京都の老舗呉服店の旦那であり、5000円程度の料金で特別に旨いディナーを食べさせる店を探し当てることが、生き甲斐の一つになっているような男です。

拓哉くんはその店でご馳走してくれると、「どうや?旨いか?」と聞いてきます。

私が、「縁はパリッパリ、中はふわ~っとジューシー。キレとコクのカーニバルや!」と決め台詞を言うと彼はご満悦になり、「苦しゅうない、近う寄れ......」状態に。まだ、こちらはいくらも飲んでいないのに......。

拓哉くんはいつも、人差し指でメガネをちょっと上げてメニューを凝視し、彼の舌に叶ったものだけをチョイスします。しかもオーダーする順番まで決めているのですから、間違いなくオタクです。

帰り際、私が次回もまた新たな店に連れて行ってほしいと頼むと、彼は値打ちを付けます。「5000円で満足できる店、見つけるのに一体ナンボかかると思ってんねん?20軒くらい回らんと当たれへんで。19軒はハズレやで!」

そこで私は、「悪かった拓ちゃん、甘う見てた。ごめんな」と言うと、拓ちゃんニコッとして、「任しといてっ!」と軽い足取りで帰っていきました。

私がこの話を持ち出したワケは、本当に味を分かる客は1割もいないという現実を知ってほしかったからです。でも、20軒中19軒のハズレの店は、相も変わらず潰れずに営業しています。

まあ、拓哉くんの好みもあるのでその分を差っ引いたとしても、まともな店は10軒中1軒くらい。逆に言うと、10人中9人の客は味が分かっていないということになります。

民泊経営に関してミシュランは視野に入れません。

いくら私が強気でも、ザ・リッツ・カールトンや星野リゾートとまともに渡り合おうとは思いません。かといって、東横インやアパホテルと勝負するのは御免です。料金競争では勝てませんし、競っても経営を圧迫するだけです。

民泊は、拓哉くんに見初めてもらうようなレベルを目指すべきなのです。ビジネスホテルよりちょっと高いけど、リラックスできて思い出に残る、お得感のあるホテルです。

逆に言えば、10人中9人のゲストを捨てることになります。

そうです、物の値打ちの分からないゲストは、遠慮いただくしかありません。

これにはちょっと勇気がいるように思われるかもしれませんがまったく反対で、とても安全な漁場です。なぜなら大手が参入してこないからです。

大手ホテルは室数が多くシェア争いも激しいので、10人中9人を捨てることはできません。

私たち民泊の個人経営者は、ブランド力なし、知名度なし、資本力なしのナイナイ尽くしですが、それでもやっていける漁場があるのです。そう、ブルーオーシャン(競争相手がいない未開拓の市場)作戦です。

Mac安田(本名 安田昌弘)
1955年京都市生まれ。一級建築士。Macデザイン研究所代表。設計事務所に勤務後、宮大工の棟梁に弟子入りして寺社建築に取り組む。その後はマンションや個人住宅の設計・建築に従事。特に外断熱住宅に早くから取り組み、デザインと断熱性、耐震性を両立させた独自の境地を切り拓く。「お客様とは一生のお付き合い」がポリシーの熱血建築家である。主な著書に『プロが教える!建築費500万円を節約するかしこい家造り』(実業之日本社)、『収益住宅のすすめ』(筑摩書房)、『外断熱住宅はここが凄い!』(日刊工業新聞社)などがある。