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「分からない」という回答から分かること? ―短観「物価見通し」における無回答バイアス―

2018年6月12日
宇野 洋輔*1
安達 孔*2

要旨

本稿は、短観の「物価見通し」における「分からない」という回答の中から、真の意味では「分かる」と推察される回答を機械学習の手法を用いて識別する。そのうえで、真の意味では「分かる」と識別された企業について、何らかの理由で回答されなかった反実仮想的な「物価見通し」を推定する。そして、その推定結果にもとづいて、無回答バイアスの大きさを評価する。分析の結果として、次の四点を指摘することができる。第一に、真の意味では「分かる」が、何らかの理由で「分からない」と回答した企業は、きわめて少ない。第二に、真の意味では「分かる」と識別された企業は、真の意味でも「分からない」と識別された企業に比べて、相対的に企業規模が小さく非製造業に多い。第三に、真の意味では「分かる」と識別された企業の反実仮想的な「物価見通し」は、公表集計値と統計的に有意に異ならない。第四に、以上を踏まえると、短観の「物価見通し」の無回答バイアスは、統計的には無視できる。

JEL分類番号 : C55, E31

キーワード : 物価見通し、PU分類、無回答バイアス

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : yousuke.uno@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局(現・松江支店) E-mail : kou.adachi@boj.or.jp

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