(本記事は、小山昇氏の著書『利益を最大にする最強の経営計画』KADOKAWA、2018年3月6日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『利益を最大にする最強の経営計画』シリーズ】
・(1)100万円超の高額セミナーでも「1年先まで埋まる」理由とは?
・(2)「儲け」よりも大事なコトとは?「16年連続増収」の社長が教えるお金の使い方
・(3)新規事業で利益を出す9つのポイント――間違ったら撤退、迷ったら止める
・(4)もっとも簡単な「経営計画書」のつくり方 「正しさ」よりも大事なコトとは?
・(5)赤字の社長ほど「真似をしない」 武蔵野・小山社長が明かす「知識より大切なこと」

利益を最大にする最強の経営計画
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

増収増益の経験なしに「利益を上げる計画」はつくれない

ほとんどの社長は、人の真似をしたり、「自分の考えを持たず、人の考えにしたがう」ことを恥ずかしいと考えます。

でも、自分の考え通りにやって赤字を出すほうが、よほど恥ずかしい。経営は、成果がすべてです。がんばって成果を出せない社長より、「人の言う通りに実行して、成果を出す社長」のほうが優秀です。

多くの会社が、0から1を生み出そうとします。ですが、経験や実績が不足しているために、結局は「1」を生み出すことはできません。

人間は、やさしいことから段階的に学んでいくのが正しい。知識も経験もないのに、0から1を生み出そうと考えてはいけません。

赤字の社長ほど、自分の頭で考えます。ですが、「考える」は、「体験から得たデータを頭の中から探してくる時間のこと」であって、体験のない人は、そもそも考えられない。増収増益の経験がない社長に「利益を上げる計画」は考えられません。

だとしたら、すでにできあがっている「1」を真似るほうが近道です。そして、「1」を「2」、「2」を「3」に変えていくほうが現実的です。

世の中の人は、「知識があること」をすばらしいと思っていますが、知識よりもすばらしいものがある。それは、「人に聞くこと」です。

できる人、わかる人に聞いて、素直に、その通りに真似ができる社長は、伸びます。

ところが、人に聞いたり、真似できない社長は、自分を変えることができません。だから、会社の業績も変わらない。独力でがんばって成果を出せないより、「人に聞きながらでも成果を出すほうが正しい」と私は思います。

独自性にこだわり、なにもないところから手探りではじめるよりも、「うまくいっていること」を真似したほうが、業績は早く上がります。

真似も3年続ければ、自社のオリジナルになる

利益を最大にする最強の経営計画
(画像=dotshock/shutterstock.com)

人間が成長しないのは、「プライド」があるからです。プライドが邪魔をして「知りません」「わかりません」「教えてください」と言えない。

ですが私には、プライドがない。武蔵野のしくみは、100%どこかの真似であり、自社で考えたものは、ひとつもありません。すべて人から教えてもらったものです。

私はこれまで、著書やセミナーなどで、「中小企業は真似することが正しい」「真似こそ最高の創造であり、真似こそ最高の戦略である」と述べてきました。

すると、「そうは言うけど、ダスキンの代理店をしている武蔵野さんと、製造業の当社では仕事の内容が違う。だから真似できない」「私と小山社長では事情が違うから、真似できない」「会社の規模も売上も違うから、真似できない」という意見をいただきました。

しかし、製造業も、小売業も、飲食業も、サービス業も、どの業種でも、お客様に商品やサービスを提供し、「粗利益額」を得ていることに変わりありません。

社員の給料も、会社の経費も、粗利益額から出ている。変わるとしたら、それはたったひとつ。扱う商品(サービス)だけです。

「経営計画書」をつくるときも、まず「他社の真似から入る」のが正しい。

私は、「〈経営計画書〉のつくり方 作成支援合宿」の参加者に「わが社の〈経営計画書〉を見て、自社にもできそうなところがあれば、そのままコピーしてください」と話しています。

まず真似から入る。そして辻褄が合わなくなってきたら、その時点で変更すればいい。真似も3年続ければ、自社のオリジナルになります。

病院も、会社も、経営の本質は変わらない

「はせがわ整形外科クリニック」(整形外科)の長谷川恭弘院長は、「患者様の数は変わらないのに、利益が毎年減っている」ことに疑問を感じ、武蔵野の門を叩きました。

「毎年同じように仕事をしているのに、どうして利益が毎年下がるのか、その理由がわからなかったんです。今まで、一度も経営の勉強をしたことはなく、『このままだと、数年後には立ちゆかなくなる』と危機感を覚えて、小山社長の指導を受けることにしました。

小山さんに、『経営の柱になるのは、これです』と言われて〈経営計画書〉を見せられたとき、私には『できない、つくれない』と思った。すると小山社長は、こうおっしゃったんです。

『できない、じゃなくて、やれ。つくれない、じゃなくて、つくれ。中身は関係ない。どんなものでもいいから、つくることが大切です。ただし、経営の勉強をしたことがない長谷川さんには、いくら考えても〈経営計画書〉はつくれない。人は、経験していないことは考えられないからです。だから、他の会社の〈経営計画書〉をコピーしてつくる。そして、1年間運用してみて、自分の病院に合わないところを直せばいい』

そこで、ほかの会社の〈経営計画書〉をコピーして、会社を病院に、お客様を患者様に、社長を院長に、商品を治療に書き直した〈経営計画書〉を作成しました」(長谷川恭弘院長)

長谷川恭弘院長は、「〈経営計画書〉をつくったことで、スタッフの価値観がそろうようになった」と実感しています。

「今までは、院長は前を向いて、師長は右を向いて、事務長は左を向いて、他のスタッフの中には反対を向くなど、スタッフがいろいろな方向を向いていました。ところが、〈経営計画書〉をつくってからはベクトル方向が合って、心がそろって、向かうべき方向がひとつになったと感じています。

経営方針を明確にしたことで、利益も上がっています。〈経営計画書〉をつくる前の私は、社会を見ていなかった。世の中が変化していくのを見ていなかった。自分中心で考えていたんです。『世の中が変化しても、自分は食っていける』と思い上がっていました。社会が変わっているのに、私がやっていた治療は同じだった。だから収益が下がっていた。

小山社長に教えていただいたのは、『自分がやりたい治療』ではなくて、『時代に合った治療』『患者様が望む治療』を提供することです。

医者の正しさを患者に押し付けてはいけない。〈経営計画書〉の作成を通して『患者様の立場に立った考え方をしなくてはいけない』ということを教わりました。

言われてみれば当たり前ですが、医師の世界ではなかった考え方で、とても参考になりました。小山社長の考え方は、業種、形態を問わず、すべての仕事に当てはまる再現性の高いものだと思います」(長谷川恭弘院長)

小山昇
株式会社武蔵野代表取締役社長。東京経済大学卒。1976年日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社、1989年より現職。「落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から「経営サポート事業」を展開、700社以上の会員企業を指導。年間240回の講演・セミナーを開く。2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度「IT経営百選最優秀賞」、2000年、2010年日本経営品質賞受賞。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。主な著書に『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『絶対会社を潰さない強い社員の育て方』(KADOKAWA)、『残業ゼロがすべてを解決するーーダラダラ社員がキビキビ動く9つのコツ』(ダイヤモンド社)など多数。