(本記事は、小山昇氏の著書『利益を最大にする最強の経営計画』KADOKAWA、2018年3月6日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『利益を最大にする最強の経営計画』シリーズ】
・(1)100万円超の高額セミナーでも「1年先まで埋まる」理由とは?
・(2)「儲け」よりも大事なコトとは?「16年連続増収」の社長が教えるお金の使い方
・(3)新規事業で利益を出す9つのポイント――間違ったら撤退、迷ったら止める
・(4)もっとも簡単な「経営計画書」のつくり方 「正しさ」よりも大事なコトとは?
・(5)赤字の社長ほど「真似をしない」 武蔵野・小山社長が明かす「知識より大切なこと」

利益を最大にする最強の経営計画
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

原価積み上げ方式で利益が出ない

多くの会社は、「原価積み上げ方式」で利益を出そうと考えています。

原価積み上げ方式とは、仕入原価に必要経費を加えて、これに利益を上乗せして商品やサービスの価格を決める方式です。

「100円で仕入れた商品に30%乗せて130円で売る」といったように、仕入れた商品の代金(仕入原価)に、ある一定の比率を乗じて、販売価格(売値)を決めるのが世の中の主流です。

原価割れしない安心感があり、マーケットの分析(需要の分析)をしなくても、単純にコストから計算して価格を決めることができます。

しかしこの方式は、設定した販売価格に対して、「お客様がどう反応して、需要がどう変化するか」が考慮されておらず、お客様に受け入れられる(売上につながる)保証がない。

そこでわが社では、原価積み上げ方式による値づけはしません。

では、どのようにして販売価格を決めているか、

「お客様の満足度」

で決めています。

利益が出ない原因のひとつは、「お客様の満足度がどこにあるのか」を無視して価格設定をしていることです。

大切なのは、需給のマッチングです。武蔵野の業績がいいのは、商品構成も、商品の販売価格もすべて「お客様の声」を起点にして考えているからです。

商品の価格は、お客様の満足度に比例して高くなります。「1枚1000円」のタオルでも、「イチロー選手が、メジャー通算3000本安打を達成した試合で使用したタオル」だと、「10万円」で売ってもいい。なぜなら、「イチロー」という付加価値がつくことによって、お客様の満足度が上がるからです。

2泊3日150万円の超高額セミナーに人が集まる理由

武蔵野でもっとも高額な商品は何かというと、「実践経営塾プレミアム合宿」です。

合宿型の研修(現在は2泊3日)で、費用は「150万円」です。

今から5年ほど前、経営サポートパートナー会員の社長数人から、「受講料は高くてもいいので、少人数制のセミナーをつくっていただけませんか?」の提案があった。

そこで私は、「実践経営塾プレミアム合宿」(3泊4日人限定)の少人数制クローズドセミナーを設計した。

プレミアム合宿は、「2人」参加で損益分岐点を超える高収益商品です。

定員は15人で、満席になれば、「13人分」(150万円×13人=1950万円)が利益になります。

そのプレミアム合宿に参加した社長が、口々に「150万円は安かった」と満足するのは、参加した社長にとって、

「同じ収入なのに、手持現金が大幅に増加した」
「少人数制クローズドセミナーでなければ話せない社員のドロドロ、社長自身のドロドロ、会社のドロドロを相談、解決できた」
「小山昇の直接指導を受け、会社で実践した結果、受講料以上の利益を会社にもたらすことができた」

など、「150万円以上の付加価値があった」からです。

当初、プレミアム合宿は、「3泊4日 15人限定」で行われていました。年に2回しか開催していなかったため、年間30人しか参加できません。人気のあるセミナーで、「1年半待ち」の状態が続いた。

あるとき、プレミアム合宿へ参加していた株式会社小田島組の小田島直樹社長が、武蔵野の社員に向かって、「3泊4日ではなく、2泊3日でも十分に価値がある」と漏らした。

その情報を耳にした私は、「そうか。じゃあ、2泊3日に変えちゃえ。2泊3日ならオレのスケジュールも取りやすいし、年3回以上開催できる」と考えて、プログラムをただちに変更することにした。

私は、

「3泊4日/15人限定/年2回開催」

のセミナーを

「2泊3日/12人限定/年6回開催」

に変更しました(開始時間を早めるなど、細かなプログラム変更も実施)。

すると、キャンセル待ちがなくなり、「受講日が1日減った」「参加人数が3人減った」ことで、受講者の満足度がさらに上がった。

もちろん、お客様満足度に比例して、武蔵野の利益も上がりました。「3泊4日/15人限定/年2回開催」のときは、1回につき「1950万円」の利益が出て、年2回で「3900万円」(1950万円×2回)です。

「2泊3日/12人限定/年6回開催」に変更して、損益分岐点の2人分を引いて計算すると、1回につき、「150万円×10人=1500万円」。

年6回開催すると、「1500万円×6回=9000万円」。「年間3900万円」だったプレミアム合宿の利益は、「年間9000万円」に増えました。

付加価値とは、商品に「ラブストーリー」をつけること

付加価値とは、商品に「ラブストーリー」をつけることです。

私の「かばん持ち研修」は、朝6時から仕事が終わるまで、食事のときも、トイレのときも(笑)、小山昇のそばについて、経営の考え方とやり方を学ぶ現場研修プログラムです。

費用は、3日間で108万円(1日36万円)。

決して安くはありませんが、1年先まで予約で埋まっています。私は多い日は1日に「1万歩」歩くから、「1歩=30円」の計算です。

リピートする人が多く、10回以上、私のかばん持ちをしている社長もいます。なぜ、それほど人気があるのか。

「小山昇と時間や場所を共有できる」
「隠しごとはなく、現場、現実、現物のすべて見せてくれる」
「小山昇の考え方を毛穴から吸収できる」
「かばん持ちで学んだことを持ち帰ると、会社が変わる」

といったラブストーリーがついている。

購入者の「声」がラブストーリーになる

商品にラブストーリーをつけるには、

「お客様に喜ばれたこと」
「ほめられたこと」

を、そのままストレートに他の人に伝えることです。

したがって、その商品を買った(利用した)お客様に、

「この商品をなぜ買ったのですか?」
「この商品をどうやって知ったのですか?」

と聞いてみて、その中から、多くの人が関心を持つことをラブストーリーにすればいいでしょう。

価格が安くても、ラブストーリー(付加価値)がない商品は売れません。

反対に、価格が高くてもラブストーリーがある商品(高付加価値の商品)は売れる。

商品が売れるか、売れないかは、「販売価格」で決まるのではありません。

ラブストーリー(付加価値)があるか、ないかで決まる。

小山昇
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒。1976年日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社、1989年より現職。「落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2000年、2010年日本経営品質賞受賞。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。主な著書に『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)、『改訂3版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)などがある。