じつは、同じ地域でも学校ごとに明確な「体験格差」が存在しているという現実

義務教育が全国で標準化されていても…

習い事や家族旅行は贅沢?子どもたちから何が奪われているのか?

低所得家庭の子どもの約3人に1人が「体験ゼロ」、人気の水泳と音楽で生じる格差、近所のお祭りにすら格差がある……いまの日本社会にはどのような「体験格差」の現実があり、解消するために何ができるのか。

発売即重版が決まった話題書『体験格差』では、日本初の全国調査からこの社会で連鎖する「もうひとつの貧困」の実態に迫る。

*本記事は今井悠介『体験格差』から抜粋・再編集したものです。

より細かく「地域」を見ていくと

地域と体験格差という観点に立ったとき、今回の調査だけでは見えてこない、より細かな地域ごとの実情があるだろう。

まず、今回の集計で「都市部」とした三大都市圏の中には、実際には、政令市のような人口規模の大きな自治体から、山間部の小規模な自治体までが含まれてしまっている。

こうしたざっくりとした分類が有効でないわけではもちろんないが、もし都道府県レベルではなく、より細かな自治体のレベルで「都市部」と「地方」の分類を行うことができれば(それに足るサンプル数の調査を実施することができれば)、「体験」の機会やそれに対する支出の程度の違いは、より明確に見えてくるだろう。

さらに言えば、同じ自治体の中でも、地域ごとの違いが存在する。首都圏のとある自治体では、JRの駅周辺には高級マンションが建ち並び、スポーツクラブや音楽教室などが多くある一方で、駅から離れたエリアに行くほど民間事業者は少なくなり、公共施設で活動する地域のボランティアによる体験の場が増えていく。

これらのエリアは互いに隣接していて、徒歩や自転車でも移動できるほど近い。だが、どちらのエリアに住んでいるかによって、子どもたちが選び得る「体験」のあり方は変わってくるだろう。

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  • 2024年6月の発売予定
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  • 体験格差/今井悠介
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  • 学び直し高校物理 挫折者のための超入門/田口善弘
  • 2024年6月の発売予定