なぜ組織の上層部ほど無能だらけになるのか? 張り紙が増えると事故も増える理由とは? 飲み残しを放置する夫は経営が下手?
10万部突破のベストセラー『世界は経営でできている』では、東京大学史上初の経営学博士が「人生がうまくいかない理由」を、日常・人生にころがる「経営の失敗」に見ていく。
※本記事は岩尾俊兵『世界は経営でできている』から抜粋・編集したものです。
裸の王様組織:「制度的無能状態」という落とし穴
もちろん新人に対して社会人の自覚を持たせるための叱咤激励は必要だ。
だがそれは「三手目」でいい。一手目はとにかく顧客の信頼を回復する策を練ることだ。二手目はこうした事態が起こった要因の分析と、営業活動が上手い課員の成功要素を抽出して他の課員(特に新人)と共有することである。
そうした対策を練らないと何度も同じ失敗を繰り返すだけだ。たとえば、自動車の運転においても、「事故を起こすな」という標語は何の意味もない。「飲んだら乗るな」「スピード出しすぎ注意」といった事故原因の分析に基づいた対策標語こそが必要となる。仕事もこれと同じことだ。
それどころか、変えられない過去を責め続けると、次から失敗は巧妙に隠されるようになる。失敗は上司が気付いたときには取り返しがつかないほどに肥大化するようになる。
ここまで読んで、自分もこれまで仕事ではない何かを作りだしてきたかもしれないと気まずさを覚える人もいるだろう。その何倍もこうした何かに苦しめられてきた苦い記憶を思い出した方も多いだろう。
残念なことに、むしろ無意味な何かを生み出すことを仕事だと思っていたり、恐ろしいことにこれこそが経営だと思っていたりする人もいる。