2024.04.24

私たちにとっての永遠のナゾ、「言葉」とはなにか…そんな究極の疑問に日本哲学が出した「驚きの答え」

明治維新以降、日本の哲学者たちは悩み続けてきた。「言葉」や「身体」、「自然」、「社会・国家」とは何かを考え続けてきた。そんな先人たちの知的格闘の延長線上に、今日の私たちは立っている。『日本哲学入門』では、日本人が何を考えてきたのか、その本質を紹介している。
※本記事は藤田正勝『日本哲学入門』から抜粋、編集したものです。

不可思議な「言葉」

一般に「言葉とは何か」ということを考えてみると、二通りの理解が成り立つように思われる。

第一に考えられるのは、言葉は、考えるための、あるいは考えたものを表現するための道具である、という理解である。つまり言葉は、あらかじめ存在している思考の内容──それは日本語とか英語といった具体的な言語、自然言語以前のものと言わざるをえないであろう──に形を与えるものであるという考えである。

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それに対して、第二に、思考は言葉を通してはじめて成立するのであり、言葉は思考の単なる道具ではない、という考え方も成り立つ。つまり、思想は言葉という形をえて、はじめて思想として成立するのであり、それ以前に純粋な思想というものがあるわけではない、という考え方である。

この二つの考え方は、それぞれ次のような考えに結びついている。

第一の見方は、私たちが日本語なり、英語なり、自分の言語(母語)を使う以前に、つまり、水とか、木とか、土とか、あるいは water とか、tree とか、soil といったことばを使う以前に、言いかえれば、ある事柄にそういう名前をつける以前に、もの、あるいは世界が客観的に区分(分節、articulate)されていて、それぞれに、いわば偶然的な仕方で、たとえば日本語であれば「水」という名前を、英語であれば “water” という名前をつけているのだ、という考えと結びついている。ここでは言葉は、一つの符牒として、つまり道具とみなされている。

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