2024.04.20
# 格差・貧困

週刊誌連載2本で慢心した大藪春彦賞作家がハマった「落とし穴」…そして作家は当てもなく階段を昇り続ける【「鶯谷」第十九話#2】

作家の慢心

今にして思えば、私がこれほど四苦八苦しているのは単純に出版不況の波に吞まれたからだけではなく、もうひとつの要因が考えられる。

一昨年、1年間の週刊誌連載を2本抱えた。
そのため、その期間は他の作品を発表できずにいた。

しかもその翌年の1年間は、当該作品うちの1作の全面改稿に費やした。
すなわち都合2年間は、ろくに新作を発表できないまま過ごしたのだ。

さらにあろうことか、慢心していた私は、連載終了時に時間をおかず単行本として出版して下さった版元の担当さんに、作品が気に入らないと文庫化を断ったのである。
その版元さん、そして担当さんとの関係が、取り返しのつかないほど悪化したのはいうまでもない。

あえて言い訳をするなら、週刊誌連載をしていた1年間の収入は、会社経営をしていたころを上回るほどで、それで慢心したのだ。

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しかし落とし穴があった。
税金だ。
連載を終えた翌年の税金は、目玉が飛び出るほどの額だった。
もちろんそれを支払えるだけの収入があったのだから、備えておけば問題はなかったのだろうが、それを怠り散財しまくった。

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