2024.04.20

「正義は人それぞれ」という考え方、じつは「すごく危険」だって気づいていますか…?

「正義」という言葉はどうにも扱いが難しい。言葉を使う人によって「正義」がもつニュアンスが違ったり、そのことによってすれ違いが起きたりするからだ。

正義という言葉に関連して、いまの日本でしばしば耳にするのは、たとえば「正義の暴走」や「正義は人それぞれ」といった表現である。こうした表現は、「正義」という概念を厳密に考えてきた研究者の目には、どのように映るのか。

このほど『今を生きる思想 ジョン・ロールズ』を上梓した学習院大学教授の玉手慎太郎さんが、政治哲学から見た「正義」について、いくつかの角度から語る。

日本での「正義」のイメージ

——「正義の暴走」という言葉が使われているのをときどき見かけます。

たとえば、コロナ禍のさい飲食店などの営業自粛を求めて攻撃をおこなう「自粛警察」があらわれましたが、これは「正義の暴走である」と言われました。

政治哲学や倫理学をご専門とする玉手さんからは、「正義の暴走」という言葉はどのように見えますか。

玉手 「正義の暴走」という表現には、日本おいて「正義」という言葉がもつイメージやニュアンスが比較的よくあらわれているように思いました。

日本では「正義」という言葉には、「全面的に正しいこと」というイメージがつきまとうように思います。「正義の味方」「正義のヒーロー」のような言葉遣いが典型例ですね。

先ほど挙げてくださった「自粛警察」もそうです。「自分が全面的に正しい」と思っているような、やや独善的な行動をする人たちを指して、「正義の暴走」という表現を使っているわけですよね。

  • ウイルスはそこにいる/宮坂昌之・定岡知彦
  • 体験格差/今井悠介
  • 今を生きる思想 ジョン・ロールズ 誰もが「生きづらくない社会」へ/玉手慎太郎
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