不動産収入がある人は、毎年確定申告を行う必要があります。1年間でどのくらいの収入があり、どのくらい経費がかかったのかを計算し、納税額を確定するための作業です。今回は確定申告時の「不動産所得」の計算方法や、必要経費として認められるものなどについて説明します。

不動産所得の計算方法

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(画像=Watchara Ritjan/Shutterstock.com)

基本的なおさえておくべき事項として、不動産を貸し付けることによって得られる家賃などの収入すべてに税金がかかるわけではなく、1年間の総収入から「必要経費」を差し引いた額に対して課税されます。

「事業的規模」かどうかで必要経費の範囲が変わる

ただし必要経費については、その不動産貸付が「事業的規模」で行われているかどうかによって、経費として認められる範囲が変わります。建物の貸付については、以下のいずれかに当てはまれば、原則として事業として行われているものと見なされます(「5棟10室基準」と呼ばれる)。

1.貸間、アパートなどについては、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
2.独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

マンションやアパートは10室以上、戸建ては5棟以上貸し付けている場合に「事業的規模」に該当することになり、主に以下のようなメリットがあります。

・建物を取り壊した場合の費用が全額必要経費となる
・親族の給与が必要経費となる(青色申告の事業専従者給与又は白色申告の事業専従者控除)
・青色申告特別控除が最高65万円まで認められる

ただし、上記の規模以下であっても事業的規模と見なされることがあるので、判断が難しい場合は税理士などの専門家に相談するといいでしょう。

必要経費にできるのはどんな費用?

不動産賃貸業では、以下のような費用が必要経費として認められています。

・租税公課:不動産取得税・登録免許税・固定資産税・印紙税・事業税など
・損害保険料:建物の火災保険料・地震保険料
・借入金の利子:土地や建物の購入など、事業のための借入金の利子
・減価償却費:建物取得価格を耐用年数に応じて各年に按分した金額
・修繕費:建物の修繕に要した金額
・管理費:管理会社などに支払った金額
・水道光熱費:マンション・アパートなどの共用部分の水道料金・電気料金など
・宣伝広告費:入居者募集などのための宣伝・広告費用
・仲介手数料:不動産業者へ支払う賃貸契約時などの仲介手数料
・地代:借りた土地に建物を建てた場合に地主へ支払う地代

なお修繕費は、全額必要経費にできる場合は「修繕費」、できない場合は「資本的支出」として減価償却をしていくことになります。修繕費となるのは、以下の費用です。

・20万円未満の修繕費用
・3年以内の周期で行われている修繕費用
・明らかに修繕費と区分されるもの
・区分が明らかでない費用は60万円又は前年の取得価額の10%以下

こちらについても、判断が難しい場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

所得税(復興特別所得税を含む)・住民税や、罰金・科料・過料、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃・給与(青色事業専従者給与・事業専従者控除は除く)などは必要経費として認められません。なお資本的支出にあたる場合は、減価償却相当額が必要経費となります。

不動産所得は損益通算ができる

不動産収入から必要経費を差し引いた額が不動産所得となりますが、この額が赤字の場合は、給与所得や事業所得などの所得と「損益通算」をすることができます。

ただし、「不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額」は損益通算ができません。土地と建物を取得する際に借入をした場合は、借入額を按分して利子額を計算し、赤字の額が土地の負債の利子額よりも少ない場合には損益通算の対象とはなりません。

このように1年間の所得金額を計算した後、基礎控除・社会保険料控除などの各種控除額を差し引き、「課税される所得金額」と「所得税額」が決まります。

不動産所得は比較的わかりやすい所得ですが、必要経費については専門家の判断を仰いだ上で適正な処理をするようにしましょう。(提供:ビルオーナーズアイ